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エルド吉水「龍子 RYUKO」 無国籍な絵、作者の凱旋に痺れる

©エルド吉水/トーチweb

 艶(あで)やかな黒髪にピンヒール、腿(もも)をつたう龍の入れ墨。個性の強い街に居ても埋もれないカッコいい女。本作は、そんな龍子が真実を求めて爆走するアクション巨編だ。

 物語は中東の王国・フルセーヤから始まる。クーデターが起こり、窮した王とある約束を交わした黒龍会組長の龍子は、勢力を拡大するなかで母の死の真相を知る。託された金印の意味は? 謎を追い、龍子は日本へ。

 歓楽街のネオンや眩(まばゆ)い閃光(せんこう)など、コントラストの強い描写が物語に潜む闇の深さを感じさせる。ド派手なアクションに抒情(じょじょう)的な心理描写、バイクや銃の描写に滲(にじ)むリアリティーなど、あらゆる“カッコよさ”を自由奔放にミックスした無国籍な絵は、オールアナログで画面から放たれる熱量に圧倒される。濃密な人間ドラマも堪(たま)らない。父の真意、腹心の部下が見た地獄、敵対する組織、憎しみの連鎖は龍子をどこへ連れていくのか――!?

 実は著者、45歳でマンガを描き始め、2010年に『龍子』の原画を発表。2016年に同作でフランスデビューを果たす。その後、イタリア、ドイツを含む世界各国で出版された本作にて、待望の日本凱旋(がいせん)デビューとなった。その経緯も漫画のようで痺(しび)れる。=朝日新聞2023年10月7日掲載