恵まれた家庭で暮らしていた平沢実斗(みと)の日常は、ハタチの誕生日に起きた事故を境に一変する。家族を失い、夢を失った青年の前に現れた作家は、君の家は過去に罪を犯した若者が集うシェアハウスになると告げる――。
被害者と加害者がひとつ屋根の下に集う時、どんなホームドラマが展開するのか? 一義的な材料だけで「加害者」と断定されるや一斉に叩(たた)き、燃やし尽くさんばかりの風潮が目に留まる今こそ注視したい題材だ。作家が見つめるモニターや、不自然に配された巨大な動物の置きものなど、「なぜ?」を積み上げてゆく演出にも引き込まれる。
1巻の後半では、住人のひとりが犯した罪とそこに至った過程が描かれる。そこでの被害者、加害者の描かれ方は、0か100かではない。等身大の十代の悩みや思惑が絡み合って起きた事件は、各キャラクターによって受け取り方が異なり、そのプリズムのような描き様がいい。硬直していた関係の先に見えた変化の兆しにも救われた。
実斗と作家以外のシェアハウスの住人は4人。それぞれが抱える罪とは? この共同生活が彼らにもたらすものとは? この先も見守りつづけたい。=朝日新聞2024年2月3日掲載