「1976年の新宿ロフト」書評 日本のロック黎明期の証言
評者: 稲泉連
/ 朝⽇新聞掲載:2024年03月23日
1976年の新宿ロフト (星海社新書)
著者:平野 悠
出版社:星海社
ジャンル:新書・選書・ブックレット
ISBN: 9784065347874
発売⽇: 2024/01/24
サイズ: 18cm/222p
「1976年の新宿ロフト」 [著]平野悠
本書の著者・平野悠氏は、ライブハウス「ロフト」の創業者だ。彼は1970年代、7坪のジャズスナック「烏山ロフト」を振り出しに、音楽家が自由に演奏できる空間の創出を目指し、次々とライブハウスを作った。
まだ日本に「ライブハウス」が少なかった時代、「ロフト」に集まったミュージシャンは坂本龍一や細野晴臣、RCサクセションなど枚挙にいとまがない。そんななか、76年に誕生したのが、300人収容の「新宿ロフト」。今では誰もが知る多くのミュージシャンが、その地下のスペースから歴史を築いた。
平野氏が当時の様子を回顧する本書に描かれているのは、日本のロック・ミュージックの黎明(れいめい)の光景。ロックやパンク、ハードコアの坩堝(るつぼ)として、ロフトが提供し続けた「空間」とはいかなるものだったのか。「日本のロックの始まり」をつぶさに見てきた創設者による、貴重な証言に満ちた一冊だ。