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「劇場版ブルーロック –EPISODE 凪-」声優・浦和希さんインタビュー「背中を押してくれるエールが詰まっている」

浦和希さん=junko撮影

凪視点で描いたからこその“違い”

――浦さんは「ブルーロック」の主人公・潔世一役での活躍が注目され、1年で最も活躍した声優に贈られる「声優アワード」で主演声優賞を受賞しました。

 ありがとうございます。こんなに誉れ高い賞をいただけるなんて思っていなかったので、とても嬉しいです。

 今までのTVシリーズは、潔の視点で描かれていたんですね。潔が主人公として葛藤したり、潔から見て相対する人物がいかに優れた人間で脅威であるかを事細かに描いたりしてきたのですが、今回の劇場版は凪が主人公になります。つまり、「ブルーロック」に来るまで凪が何を経験してきたのか、そして、「ブルーロック」での戦いの間に凪が何を考えているのかが主に描かれています。

(C) 金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会

 凪から見ると、実は潔はすごく脅威なんですよね。「なんだ、この生きもの!?」というセリフがあるんですが、そのセリフ通りに得体の知れない、ある意味初めて恐怖を感じさせる存在なんです。なので、潔というキャラクターはTVシリーズと変わらないのですが、「凪のフィルターを通して見た潔」ということが伝わるように意識しました。

――TVシリーズと劇場版では少し演技が変わるということですか。

 (石川俊介)監督から一つオーダーをいただきました。TVシリーズでは潔視点の緊迫感や焦燥感が細かく表現されていたと思うのですが、劇場版では、凪から見た潔が脅威である、ということがより際立つように、圧をかけるようにやってほしいと。「魔王」というキーワードをいただいて、魔王のような存在感を放ってほしいと言われました。

 だからといって、潔が思っている気持ちは一つなので、それがどう聞こえるか。伝え方や演出の意図に沿って誠心誠意演じさせてもらいました。他のキャラクターのお芝居の見え方も変わっていると思うので、ぜひTVシリーズと劇場版の違いを楽しんでもらえたらと思います。

初主演で声優アワード「欠かすことのできない存在」

――潔世一という役についてはどんな思い入れがありますか。

 本当にたくさんの景色を見せてくれたと言いますか、いろいろなことを経験させてくれた役で、自分の人生においても絶対に欠かすことのできない存在になったなと思います。

 ただ、お芝居に関しては、声優アワードを受賞した前と後では変わりませんし、変えてはいけないと思っています。人は称賛されたり、誰かに認めてもらったりすると浮き足立ってしまって、ついつい間違った方向に行ってしまうと思うのですが……。しっかりと軸はブレずに、潔と向き合ってお芝居をしていきたいです。

――潔を演じるときに大切にされていることとは?

 まっすぐさですね。潔って、サッカーに対してすごくまっすぐで、凛が出てきたときなどのトッププレーヤーと戦うときも「俺もあそこへ行きたい」とまっすぐに思える子なんですよね。

「ブルーロック」で揉まれていると、いろいろなことを考えてしまうと思うんですよ。負けたことに対しての言い訳だったり、「凛は糸師 冴の弟だから」といった弁解だったり。でも潔は、自分があんな風になるにはどうしたらいいのか、あいつを超えられるためにはどうしたらいいのかをひたすら考える。

 声優として「技術的にこうしたらもっと純粋に聞こえるかな」「彼の純粋さを出すためにはどうしたらいいのかな」なんて余計なことを思ってしまうこともあるんですけど……。潔というキャラクターを僕は一緒に歩んで作ってきているので、一緒に歩んできた過程を信じ、このまっすぐな潔の思いをそのまままっすぐに届けようと思っています。それだけは大切にしていることです。

みなさんの「エゴ」を灯せたら

――浦さんは連載されている頃から原作を読んでいたそうですね。原作のどんなところが魅力ですか?

 世の中にはいろいろなスポーツ漫画がありますが、そもそもサッカー×デスゲームという枠組みが面白いし、斬新だなと思います。

 その上で、原作を読んだときに僕が引き込まれたのは「これを言ってもいいんだ」と思えたことかな。みんなが思っていることだけど、なかなか言葉にするのが憚られることって、たくさんあるじゃないですか。でも『ブルーロック』に出てくる人たちは、世界一を目指したり、自分を高めたりする上で、きちんと口に出して言葉を言うんですよね。

 いろいろな経験を積めば積むほど、挫折を知って、人生はそんなに甘くないと分かってくる。だからこそ、夢に対する言葉は重くなっていって、「世界一になりたい」なんてなかなか言えない。でも彼らはそれをまっすぐに言うし、それを信じて疑わない。ここまで純粋に夢を追いかけていいんだ、今も夢を追いかけ続けていいんだ。何か物事に熱中したい人たちみんなの背中を押してくれるエールがすごく詰まっていると思うんです。その点が最大の魅力だなと思います。

――ところで、浦さんはふだん本や漫画は読みますか?

 僕は漫画を読むことが圧倒的に多いですね。漫画については結構雑食でジャンル問わず読みますが、中でもサスペンスものが好みです。殺伐とした、治安の悪い作品が好きです。

――「治安の悪い」とは?

 例えば刑事もので猟奇的な事件に巻き込まれたり、デスゲームが展開されたり。「次のページでは誰かいなくなるかもしれない!」というような手に汗握る展開や、伏線が作品の隅々まで張り巡らされていて、謎解きをするようなミステリー要素が多いストーリーも好きで、そういう作品ばかり読んでいます。

――作品をどのように選ぶことが多いですか? 人からおすすめされたものを読むことが多いですか?

 最近はなかなか出来ていないのですが……新刊が出たらとりあえず1巻を買って読んでみて、自分の好みやフィーリングに合う作品をそのまま買い続けて読むことが多いですね。

――読む際は、一旦お仕事のことは置いておいて読む?

 そうですね。声優になったら、あまり漫画を読まなくなってしまうかな、仕事に関わってきてしまうから遠ざけてしまうかなと思ったんですけど、意外とそんなことなくて。自分が関わっている、関わっていないに関わらず、もうひたすら楽しみとして読んでいます。

――最後に『劇場版ブルーロック –EPISODE 凪-』をどんな人に見てほしいですか?

 老若男女どなたが見ても共感できるような内容が詰まっているのではないかなと思っています。

「サッカー版のデスゲーム」という設定が作り込まれているので、そこに目が行きがちですが、それ以上に人間の深掘りがされていると思います。それぞれの人物がどう動いていくか、どういう気持ちで成長していくか。しっかりと説得力のある組み立てがされているので、その点も注目してほしいですね。「エゴ」をみなさんの胸に灯せたら嬉しいなと思います。