「透明マントのつくり方」書評 「透明化」は実現可能なのか?
ISBN: 9784163918853
発売⽇: 2024/08/23
サイズ: 13.8×19.5cm/344p
「透明マントのつくり方」 [著]グレゴリー・J・グバー
透明マントなんてSF小説の世界だと思っていたら「あなたももうすぐ透明になれるかも?」と不可視化現象が夢でもないようだ。「透明マントがもうすぐ実現⁉」「不可視の科学史をSFと絡めて紐解(ひもと)く、唯一無二の一冊だ!」と煽(あお)り、最近の科学はその実現に近づいている、と。
不可視を追求した物理学とSFの歴史を語りながら進む科学者の理論は、科学音痴の僕にはかなり難解だが、透明マントを作ってくれるなら大歓迎だ。
このような不可視現象を煽った張本人はSF作家らしいが、SFはあくまでフィクションだ。現実に透明化がいったいどこまで現実化しているのかは、本書ではわかったようでわからない。理論的には可能らしいが、実用化となると???
ここで話を変えるが、実はこんな事件があったとされることをこの著者はご存じだろうか。第二次世界大戦中にフィラデルフィアで行われた、アメリカ海軍による艦船のステルス(透明化)実験を。
1943年、フィラデルフィアのドックで統一場理論の実験が行われ、駆逐艦エルドリッジが透明化され、360キロ先にあるバージニア州ノーフォークのドックへ瞬間移動をしたというのだ。この事件は当時の新聞でも報じられたというくらいである。
実験と同時に緑色の光が現れ、船影全体が黄色く蜃気楼(しんきろう)のように歪(ゆが)み、約60秒後にレーダーから船影が消失したが、船内の乗組員は多大な被害を被り、死者、行方不明者が続出。精神的ダメージを受けた者もおり、軍はこの実験を軍事機密として封印してしまったという。
他にもUFOコンタクティがUFOの乗員から明かされた空中での機体の透明化は、空気のイオン化現象によるとも。これらをトンデモ情報と決めつけず、真摯(しんし)に取り組むことで、フィクションが突然現実化するやもしれない。
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Gregory J. Gbur 米ノースカロライナ大シャーロット校物理学・光科学教授。
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横尾忠則さんがアートで表現した書評です。