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「おにぎりずかん めざせ!おにぎりマスター」新井洋行さん、田中六大さん、中垣ゆたかさんインタビュー 奥深いおにぎりの世界をひもとく図鑑絵本

『おにぎりずかん』(講談社)

おにぎりのすべてわかる1冊をつくろう

――3人で『おにぎりずかん』をつくろうという話はいつはじまったのですか。

新井:2年前くらいに、作家3人と編集者で集まって遊んでいて「一緒に何かやろうよ」という話になりました。もともとみんな月に一回フットサルをしているグループのメンバーなので交流があって。「世界でおにぎりがブームになっているから、おにぎりをテーマに本をつくってみませんか」という編集者の提案がはじまりです。

 そういえば海外でもおにぎり屋さんって見かけるし、「おにぎり」は日本のソウルフードだから、海外の人たちに向けても「これ1冊あれば、おにぎりのことがすベてわかるよ」という本がつくれたらおもしろいなと。絵本としておはなしも楽しめて、かつ、おにぎりの歴史や種類についても学べる、絵本と図鑑の両方の要素が1冊に詰まっている本が、3人ならできそうだと思いました。

『おにぎりずかん』(講談社)より

――3人の分担はどのように?

新井:僕は、文章と全体の構成を担当しています。絵本のストーリーは、主人公の女の子「むすびちゃん」が上手におにぎりをつくれるようになりたくて、道場に弟子入りして、「おにぎりマスター」にいろいろ教えてもらいながらおにぎりのことを学んでいく……というおはなしです。

左から田中六大さん、新井洋行さん、中垣ゆたかさん=写真は出版社提供

『おにぎりずかん』(講談社)より

田中:ストーリー部分の絵は、僕です。みんなで集まって打ち合わせするとき、その場で「むすびちゃん」や「おにぎりマスター」のラフな絵を描いて、顔の形や髪型はこうした方がいいんじゃないかとか意見を言い合って、それをもとにキャラクターを決め、絵の部分を描いていきました。

中垣:むすびちゃんの髪型が、おにぎりの形のお団子が2つあってかわいいよね。僕はどちらかというと細かい絵が持ち味なので、図鑑的な情報部分の絵を担当しています。正直なところ、最初は「一緒に描いて大丈夫かな?」と不安だったんですよ。個性の違う2つの絵が並んだとき、それがぶつかっちゃって、いい感じにならなかったらどうしようと。でも、うまくいきましたね。

『おにぎりずかん』(講談社)より

新井:中垣さんが描いた、おにぎりの歴史やお米の炊き方もぜったい必要なページだし、「ずかん」という言葉もよかったのかも。田中さんはストーリー部分に加えて、おにぎりの絵を全50種類描いています! 

田中:おにぎりの絵、がんばりました。米を1粒1粒描いているから、1個描き上げるのに時間がかかって……。自分でおにぎりをつくってそれを見ながら描いたり、監修の「一般社団法人おにぎり協会」から「ご当地おにぎり」の写真を見せてもらったり、ほぼ実物を参考にしながら描いたんですよ。

『おにぎりずかん』(講談社)より

中垣:あと「おにぎりクイズ」のページもみんなで考えましたよね。寿司はおにぎりか、とか。おにぎりとおむすびは何が違うのか、とか。「こんなクイズがあるといいよね」って。

おにぎりを上手につくれる「おにぎりラップ」も作曲

――活躍中の絵本作家3人で、ひとつの本を手がけるのは珍しいのではないでしょうか。作家のこだわりがぶつかりあうことは?

新井:絵本は文章作家と絵描きが分担することはよくありますけど、僕らは3人とも絵も文章も書くから、珍しいと思います。こだわりをお互いにぶつけあうことも……(笑)。

田中:バチバチっとね(笑)。

新井:でも、どうしても自分を通そうという人はいないので、話し合いでスムーズにつくれました。ちなみに僕は巻末の「おにぎりラップ」の曲と歌詞も書いています。ラップのリズムで歌いながらおにぎりを上手につくれてしまうというページです! 僕がつくった曲を田中さんが編曲してめっちゃいい感じに仕上げてくれたので、ぜひ聴いてみてください。

『おにぎりずかん』(講談社)より

「おにぎりラップ」が聴ける『おにぎりずかん』紹介動画(【講談社の動く図鑑MOVE】チャンネル)

数々のおにぎりの思い出

――3人ともお子さんがいらっしゃるとか。家でおにぎりをつくることは?

新井:つくりますよ。うちはもう子どもが大きくなってお弁当づくりは卒業しましたけど、料理は好きでよくします。そもそも家で仕事をしていることが多いから、3人とも料理するよね。

中垣:下の子が幼稚園に入って、お弁当づくりがはじまったところです。おにぎりって、自分のためにはわざわざつくらないから。頻繁につくるようになったのは子どもが生まれてからですね。だっておにぎりにしないとなかなか朝ごはんを食べないんですよ。

田中:うちもそう。今、小学生と中学生だけど、朝はおにぎりが多いよ。おにぎりにすると食べるんだよね。あれ、なんでだろうね。

中垣:でも僕がつくるとおにぎりが大きすぎるって娘に言われて。ちっちゃいおにぎりにしてほしいとか、ふりかけをかけてほしいとか、けっこう要望が多くてひと手間かかる。

新井:そうそう、子どもたちが小さい頃、よくひと口サイズのおにぎりをつくってた。しらす混ぜたり、海苔巻いてあげたりしたなあ。ちっちゃいおにぎり、みんなつくってるんだね。

左から中垣ゆたかさん、田中六大さん、新井洋行さん=大和田佳世撮影

――逆にご自身が子どもの頃の、おにぎりの思い出はありますか。

田中:つくってもらったとかじゃなく、本の中のおにぎりの話なんですけど……。小学生のとき読んだ『オレンジ党と黒い釜』(天沢退二郎著、筑摩書房刊、現在は復刊ドットコムより復刊)のなかで、野草料理の得意な女の子がつくる、たんぽぽの根っこのつくだ煮入りのおにぎりが超うまそうだなと思って、食べたかったのを最近思い出しました。

中垣:小学6年生の修学旅行に出かける朝に、母に「おにぎりに、いかなご、入れといたから」と言われて怒っちゃった思い出があります。なぜかそのときはすごく腹が立って「おにぎりといえば、ふつう、梅干しとかでしょう!」と。一応持って行ったけど、電車に乗ってからすごい罪悪感で。なんであんなに怒っちゃったんだろう……。

田中:なんで? いかなご、おいしいじゃん。

中垣:父方のおばあちゃんの家が淡路島なので、いかなごを甘辛く煮詰めた「くぎ煮」がうちにたくさんあったんですよ。今は好きだけど、小6の僕は好きじゃなかったのよ。せっかく修学旅行なのにと思ったのかな。

新井:反抗期だ(笑)。僕は、母の実家の山形で食べた、味噌おにぎりがめちゃくちゃおいしかった思い出があります。おにぎりに味噌を塗って、大葉を両面につけて、バーベキューとかで焼くの。それと鮎を焼いて、きゅうりの浅漬けと一緒に食べるんですよ。おにぎりの大葉はちょっと焦げちゃうけどそれもまたおいしくて……。あのおいしさはなかなか超えられないなぁ。

おにぎりは立派な文化。知って楽しんで

――完成した『おにぎりずかん』はいかがですか。1人ずつメッセージをお願いします。

田中:この本をつくるまで、おにぎりの化石があるなんて知りませんでした。おにぎりってシンプルで奥が深いですよね。大きなおにぎりが表紙にどーんとあるのが気に入っています。中垣さんの絵と一緒になって、色やデザインもいいし、かっこよく仕上がったなと思います。

『おにぎりずかん』(講談社)より

中垣:小さい頃から、楽しい行事のときには当たり前にあるおにぎりだけど、知らないことってけっこうあるんだなと。知識や情報も楽しんでもらえたらいいなと思っています。「おにぎりラップ」も聴いてください!

新井:おにぎり屋さんって、スペインでもフランスでもハワイでも、台湾でもインドネシアでもどこでもあるんですよね。以前は「rice ball」って訳されたりしていたのに、2024年にはイギリスのオックスフォード英語辞典が「onigiri」を新しい英単語として正式に追加しているくらいですから。でもおにぎりを文化として伝えたいと思ったとき、正直、日本人の僕らもちゃんと知らないなと思って。身近でありながら、立派な文化のひとつだから、1冊にまとめられてよかったです。

 この本を読んでおにぎりを好きになってくれたら嬉しいし、子どもが自分でおにぎりをつくろうかなとか、親子で一緒につくってみようかというきっかけになったら最高です。