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第174回芥川賞・直木賞、選考委員講評 「デビュー作とは思えない筆力」ながら「逆に心配」と受賞を逃した作品は?

芥川賞の受賞が決まった(右から)鳥山まことさん、畠山丑雄さん、直木賞の受賞が決まった嶋津輝さん

 14日に決まった第174回芥川賞・直木賞の受賞作は、どのように評価されたのか。選考委員の講評から振り返る。

 芥川賞は鳥山まことさんの「時の家」(講談社)と畠山丑雄(うしお)さんの「叫び」(新潮社)に。選考委員を代表して講評した平野啓一郎さんは「受賞作は決まったけれども、かなりの僅差(きんさ)で難しい選考だった」と振り返った。候補5作で2回の投票を重ね、いずれも過半数を得た畠山さんがまず決まり、2作受賞を検討した結果、鳥山さんが続いた。

 平野さんは「叫び」について「諧謔(かいぎゃく)味のある文体で物語の推進力がある。非常に低俗な話から、郷土史にアクセスしつつ、戦中の満州にまで話を展開していくスケールの大きさもある。一種のナンセンスを極めたところに魅力を感じた」と評した。

 「時の家」には、「スピードが求められる世の中で、一つの家を舞台に、そこに住んできた人々の営みをディテールにこだわって描写し尽くすことを、非常に強い意志でやり抜いた点が評価された」と語った。

 直木賞は嶋津輝(てる)さんの「カフェーの帰り道」(東京創元社)に決まった。大正から昭和を舞台に、カフェーの女給たちを描いた連作短編。講評した宮部みゆきさんによると、最初の投票で嶋津さんがほぼ満票を獲得した。「全てのバランスがよい。小説の表現が多様化している中で、意外になかった『ど真ん中』だった」と評した。

 嶋津さんからは点数が開いたものの、他4作中3作にも強く推す声があったという。特に住田祐(さち)さんの「白鷺(はくろ)立つ」(文芸春秋)は完成度が高く、「デビュー作とは思えない筆力と資料調べをする力に感じ入ったという感想があった」。一方で「直木賞受賞が逆にかせになるのでは。心配だ」という意見があり、受賞には至らなかったという。(野波健祐、堀越理菜)=朝日新聞2026年1月21日掲載