「沖縄社会論」書評 「仲間」となり生き方へ迫る研究
ISBN: 9784480864895
発売⽇: 2025/12/10
サイズ: 18.8×1.8cm/464p
「沖縄社会論」 [著]打越正行
沖縄の建設業界の現場で働く元暴走族の男性たち、「ヤンキー」の中に20年近く入り込み、その人間関係や生き方から日本社会と沖縄の関係を浮かび上がらせた。著者の急逝後、親しかった学者らが編んだ。
戦後も占領が続いた沖縄は、日本の高度経済成長から置き去りにされた。その沖縄でもさらに周縁に、つまり「二重の周縁化」されたヤンキーを通じ、沖縄の状況が歴史的、経済的な構造と共に見えてくる。
いわゆる「参与観察」という研究手法だが、その入り込み方がハンパない。小器用にちょちょっと現場に行き、訳知り顔で論文を書いたのではない。愚直に通い、「パシリ」(使いっ走り)としてこき使われて「仲間」として認められる。刑務所の話になり「打越さん、(刑務所に)行きましょう」と軽口をたたかれるほど。著者はその理由を「調査対象社会に巻き込まれることでわかることに到達しうる」。
その背景には自分が内地出身の「くそないちゃー」(くそったれ、日本人)だという葛藤があった。にしたってここまでするか。けれど不器用だからこそ、この人のいうことは信じられる。そう思える。ヤンキーもそうだったのではないか。
であるがゆえに苦悩も抱え込む。ヤンキーには日常である暴力。それを「仲間」になり研究するのは、暴力を容認することにならないか。真っ正直な彼は己を引き裂くほどもだえぬき、しまいにヤンキーに「もう暴力はやめましょう」と言って「出入り禁止」に。その数カ月後に逝った。
膨大すぎる積み重ねの先に到達した「知りえていない世界」への分析は時にやや舌足らずで消化不良だが、解説者のていねいな読み解きが補う。しかし甘さも魅力であり、何よりもこの「世界」は彼にしか示せない。
「出禁」をくらった時に著者は、「また10年重ねます」と言っていたという。10年後の世界が見たかった、本当に。
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うちこし・まさゆき 1979年生まれ、2024年死去。社会学者。著書に『ヤンキーと地元』、共著に『最強の社会調査入門』など。
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石岡丈昇、上原健太郎、上間陽子、岸政彦〈解説〉