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「南西諸島の軍事化」書評 多様な視点で実態明かす

評者: 吉田裕 / 朝⽇新聞掲載:2026年06月06日
南西諸島の軍事化 著者:池尾 靖志 出版社:地平社 ジャンル:社会・政治

ISBN: 9784911256442
発売⽇: 2026/03/30
サイズ: 12.6×18.8cm/336p

「南西諸島の軍事化」 [著]池尾靖志

 本書は「対中抑止」を目的にした日米同盟の強化が、南西諸島の軍事化を促進する様相を克明に明らかにした労作である。分析は多岐にわたるが、国際関係論との関連では、「脅威」という概念を構成主義の視点から批判的に再検討していることが注目される。具体的には、「脅威」なるものが、どのような言説によって構築され、政策決定を正当化し、外交などの他の選択肢を不可視化するのか、という問題の解明である。
 また社会の軍事化という点では、住民の生活の確保という問題が周縁化されるプロセスに関心を払いながら、自衛隊の配備や基地機能の強化が、地域社会に及ぼす影響を多面的に考察している。
 さらに、軍事化のうねりが、南西諸島だけでなくオスプレイや長距離ミサイルの配備という形で九州へ、そして弾薬庫の整備、民間空港や港湾の軍事利用という形で本州や北海道にまで波及していること、すなわち「列島軍事化」の実態を明らかにしたことも重要な意味を持つ。
 昨今の状況を考えるならば、多くの人に読んでほしい著作である。