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詩歌文学館賞、贈賞式 100歳の歌人「言葉が規制されぬ世界を」

詩歌文学館賞を受賞した歌人の春日真木子さん(中央)、俳人の西村和子さん(左)、詩人の小林坩堝さん=岩手県北上市

 岩手県北上市の日本現代詩歌文学館(高野ムツオ館長)で5月下旬、詩歌文学館賞の贈賞式が開かれた。短歌部門で受賞した100歳の歌人・春日真木子さんは、東京から娘で歌人のいづみさんとともに参加。「言葉を誰からも規制されることなく自由に詩歌を作ることができることを願っています」とスピーチし、大きな拍手が送られた。

 歌誌「水甕(みずがめ)」の発行人を現在も務め、受賞歌集「宇宙卵」(角川書店)には95歳を過ぎてからの歌を収めた。ほとんど車椅子での生活になり、窓から空を見上げる日々。「外を眺めていると、自分が宇宙に浮かぶ卵のように思えてきます」

 宇宙卵を思う時、終戦後まもなくニワトリが産んだ卵のぬくもりが重なるという。学徒出陣で戦争に駆り出された「水甕」の若者が無事に帰還し、持ってきてくれたニワトリだった。

 戦時中、「水甕」の歌会で憲兵の取り調べを受け、戦後のGHQによる検閲も体験。いま見上げる空の続きに「戦火があり、戦う人、逃げ惑う人がいます。命が脅かされるだけではない、言論や思想も脅かされていることでしょう」と世界の戦地に思いをはせた。

 100歳は、まったく未知の時間。「短歌があるおかげで、時間を持て余すことなく言葉と遊んだり格闘したりしています」

 受賞スピーチに先立ち、選考委員代表の小島ゆかりさんは静かな反戦の歌として〈開戦も終戦もしかと聞きし耳いま聞き流す棒読みの議事〉という一首を紹介。「開戦も終戦も覚えているからこそ、次の開戦の足音を気配として感じる」と解説した。

 詩部門で受賞した詩人の小林坩堝(かんか)さん(36)は盟友であった詩人の故・榎本櫻湖(さくらこ)さんについて触れ、受賞作「落下の夢――vergissmeinnicht」(思潮社)は「今ここにある不在にまなざしを向けて、忘れない、忘れるなと言いたい」との思いで作り、「落下とは絶望の体現ではなく希望の発現」と話した。

 句集「素秋」(朔〈さく〉出版)で受賞した俳人の西村和子さん(78)は、中学時代に定型詩の魅力を教えてくれたのは石川啄木だったと打ち明けた。「まだまだ啄木のような名作はできません。一句でも人に覚えられる俳句ができたら」と語った。(佐々波幸子)=朝日新聞2026年6月17日掲載

 ◇春日真木子さんのスピーチの一部は動画でもご覧頂けます。QRコードから。