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「税 起源・歴史・現在」書評 公正と効率を満たす妥協の産物

評者: 川出良枝 / 朝⽇新聞掲載:2026年06月20日
税 起源・歴史・現在:なぜ払うのか? 誰の負担が重いのか? 著者:スティーヴン・スミス 出版社:白水社 ジャンル:社会・政治

ISBN: 9784560024836
発売⽇: 2026/03/27
サイズ: 21×1.5cm/180p

「税 起源・歴史・現在」 [著]スティーヴン・スミス

 払わないで済むなら、なるべく払わないで済ませたい。税についてそういう本音をもつ向きも多かろう。だが、本書の紹介するデータでは、日本、中国、インドでは、機会があれば税金をごまかすかという問いに対して、8割がごまかしは決して正当化できないと回答したという。
 この数字をどう解釈するかはともかく、善良な納税者としては、仕組みをよく理解した上で支払いたい。だが、税の話はむずかしい。わかりやすさへの配慮がいきとどいた本書だが、主な税の種類には、所得税、売上税、物品税、法人税、固定資産税、さらに環境税や関税などのその他の税があると並べられると、腰が引けてしまう。
 だが、著者はあえて各国の多様な税制を紹介し、税の組み合わせの比率にまで光を当てる。著者のメッセージは明快だ。自国の税制は決して唯一の選択肢ではない、必要な税収の確保に最適な方法を求めて広く代替案を検討せよ、というのである。大きな歴史の流れの中で今の税制を捉える視点も本書の美点である。人頭税やら窓税やら単一税率の所得税やら、専門家には不評の税も、格好の教材となる。
 付加価値税(消費税)についての分析も手厚い。所得税は、通常、高度な累進性をもつ。消費税は累進性が緩く、ときに逆進性を示す。税の公正という点では、所得税の方が勝っている。にもかかわらず、なぜ、消費税がもてはやされるのか。税とは、公正と効率という矛盾する二つの課題を満たすための妥協の産物だから、というのが著者の答えである。食料品の税率をゼロとする自国イギリスの制度への判定も一読の価値がある。
 公共政策の専門家らしく、税制を経済のみならず、政治の問題として捉える視点も冴(さ)えている。「政治家はできもしない税に関する公約を掲げ、当選すれば今度は、居心地の悪い思いをする」。いずこも同じと苦笑いしたくなる指摘である。
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Stephen Smith 英ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン名誉教授(公共政策、税制財政)。著書に『環境経済学』。
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若林茂樹訳