ISBN: 9784588011993
発売⽇: 2026/03/10
サイズ: 13.8×19.4cm/556p
「ズボンの政治史」 [著]クリスティーヌ・バール
ファッションショーを見た帰りに手に取った本書。その日穿(は)いていた愛用9年目のニッカポッカがどのようにして誕生してきたのか、深掘りしてあり衝撃を受けました。
フランスを中心に歴史の流れ、主に民主化運動の流動と共にズボンがいかに変化してきたか、という枠組みで、当時のズボンの有り様を確認できる挿絵も多く、丁寧に解説されています。自分の知っているファッション用語と、その誕生時の形や目的、現代までの変容を想像するだけでも楽しめる一冊でした。
特に第1章から最後まで登場する「キュロット」。本書の本流として、18世紀フランスの民衆「サン=キュロット(キュロットではないもの、転じて権力者ではないもの)」の定義、民衆の「長ズボン」と比較して、形や着用層の変化を追っていきます。
「貴族系の男性が穿くぴったりした膝丈(ひざたけ)」から始まり、女性が乗馬時にドレスの下に穿くペチコート的キュロットは、19世紀にやっと登場。
キュロットだけではない、女性に禁じられてきたズボンの数々。そこへの抵抗と解放。エレガントなスカートへの回帰、反転、発展……。
機能性以上に「シルエット」で選択されてきたらしいズボンたち。そこには性別関係なく「他者にこう見られたい」人々の意識があり、自分の好みだけで服を選べる現代の幸福も感じます。
1792年6月20日、民衆が宮殿に流れ込み王に赤い帽子を被(かぶ)せた「サン=キュロットの日」から234年。彼(か)の国では記録的熱波で死者も出ているようで、ファッションに留(とど)まらない、命を守る装備としてのズボンを考える必要もありそうです。そう考えると、現代日本でのキュロットはズボンとスカートの中間、いわば「短めの袴(はかま)」として通気性抜群、酷暑には男女共にオススメしたいズボンでもあります。
心身を包み環境に対応する、この先の時代のズボンも楽しみです。
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Christine Bard 仏アンジェ大教授。歴史学者。現代フェミニズム史学の刷新に取り組む。2023年には日本で講演した。
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吉川佳英子、村田京子、新實五穂、西尾治子、丹羽晶子、渡辺采香訳