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「地球内生命」書評 深海や火口で素材集める冒険記

評者: 横尾忠則 / 朝⽇新聞掲載:2026年06月27日
地球内生命――私たちがまだ知らない地下の異世界 著者:カレン・G・ロイド 出版社:みすず書房 ジャンル:社会・政治

ISBN: 9784622098447
発売⽇: 2026/04/20
サイズ: 19.4×2.3cm/268p

「地球内生命」 [著]カレン・G・ロイド

 『地球内生命 私たちがまだ知らない地下の異世界』とくれば、てっきり地球内部に広大な空洞が存在するという「地球空洞説」とばかり思って飛びついたら、ジュール・ベルヌの『地底旅行』でも、神秘思想でチベットのポタラ宮殿の地下と結ばれているとも言われるアガルタ王国の首都シャンバラの高度な文明都市でもなく、リチャード・バード少将が北極の巨大穴から地球の内部世界に入って高度な文明を見いだしたという〈事実〉とも無関係。暗黒の生命圏をフィールドワークで体験したノンフィクション、地下深部の微生物の話で、なーんだ現実版の地球空洞説か?と言わないで下さい。
 私もてっきり、地球内生命というから、地球内部の巨大な空間に住む高度に知的な巨人に遭遇したという世紀の大事件とばかり思っていたら、たとえば岩盤のわずかな隙間のような地表と隔絶された場所に、もう一つの巨大な生命圏が、現実の地球内部に「あった、と分かった!」ということで、人間などの祖先に極めて近い微生物が地下で発見され、生命が如何(いか)に複雑化していったのかという謎に迫る話だった。
 地下深部は地表に比べるとそんなに激しい変化があるわけではなく、まるで数十億年前の生命の姿をとどめたタイムカプセルのような場所として描かれている。それだけではなく、潜水艇で深海に潜り、火山の火口に降りてサンプルを採取する冒険記でもあります。
 地下の調査はほぼ手つかずだけれども、著者は「見えないものも信じる必要がある」として、疑問に答えるため、「いいじゃない、やろう!」と決意をします。
 だったら、もうひとつ深部にある地球空洞説まで下降して、今世紀最大の秘密を解き明かしてくれませんかね。「見えないものも信じる」と今おっしゃったじゃないですか!
 知性を凌駕(りょうが)した彼方(かなた)の霊性に目覚めた時、伝説は現実になります。
    ◇
Karen G. Lloyd 微生物学者、生物地球化学者、南カリフォルニア大教授(地球科学など)。本書が初の著書。
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黒川耕大訳