第175回芥川賞・直木賞の贈呈式が21日、東京都内で開かれ、受賞者2人が喜びを語った。
芥川賞を受賞した小砂川チトさんは、「私は子供の頃から、なるべく無難であろう、悪目立ちしないように気をつけようと努力を重ねて生きてきた」と切り出した。群像新人文学賞を受けたデビュー作以来、立て続けに芥川賞候補に選ばれてきたが「デビューしてみたら、むしろ個性や感性で殴り合うような世界で、自分の凡庸さに悩むことになりました」とこれまでの歩みを振り返った。
3回目の候補入りで芥川賞を射止めた受賞作「ゾンビ回収婦」(講談社)は、AIに仕事を奪われて失業した女性がゾンビを回収する仕事に就く、小砂川さんならではの個性的な物語になった。これまで支えてくれた編集者たちに「ご恩を少しでもお返しできたことがうれしい」。小川洋子さんが今回で芥川賞の選考委員を退くことにも言及し、「その最後の回に受賞したことを光栄に思う。そのことに恥じない書き手に育っていけたら」と語った。
「けんぐゎい」(光文社)で、直木賞を受けた朝倉かすみさんも、3回目の候補入りだった。今回で選考委員を退任する桐野夏生さんは祝辞で、「周到な準備のもとに自由に書かれた傑作。最後に『けんぐゎい』のような作品に出会えて本当に幸運だと思いました」と評した。
朝倉さんは、憧れだった直木賞はいつしか、「私じゃない誰かがもらうものなんだなというような気持ちになっていた」。そんな時に受賞して、「ずっとなんとなく驚いています」と思いを語った。
「直木賞というものの大きさとか重みとか、そういうのはまだピンとこない感じなんですけれども、ただ直木賞をいただけたことが私にとってとてもいいことだっていうのは分かります」。そして、「何が言いたいかっていうと今とても幸せですということです」と続け、喜びを表した。(編集委員・柏崎歓、堀越理菜)=朝日新聞2026年8月26日掲載