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『世界は「賭け」で動いている』書評 選挙予測の風雲児の政治観とは 

評者: 山中季広 / 朝⽇新聞掲載:2026年08月29日
世界は「賭け」で動いている 期待値で未来を読むリスクテイカーたちの思考法 著者:ネイト・シルバー 出版社:光文社 ジャンル:ビジネス・経済

ISBN: 9784334110635
発売⽇: 2026/07/23
サイズ: 21×3.6cm/624p

『世界は「賭け」で動いている』 [著]ネイト・シルバー

 記者として私が米国に駐在したころ、選挙予測の世界に風雲児が現れた。自ら編み出した統計解析手法を駆使して2008年の大統領選で全米50州のうち49州で勝敗予測を的中させた。
 その若き統計学者を米紙ニューヨーク・タイムズは自社に引き込む。彼の人気ブログを自社サイトの目玉に据え、その論評を新聞に載せた。12年の大統領選で50全州の勝敗を正しく言い当て、絶賛を浴びたのが本書の著者である。
 だがタイムズとの蜜月はわずか3年で終わる。当時、同紙の記者から私が側聞したのは、編集幹部や政治記者たちとのあつれきに嫌気がさしたという話。本書でも著者自ら「タイムズには複雑な思いを抱いている。円満退社ではなかった」と明かす。
 続く16年の大統領選は彼の運命を大きく変える。彼の予測では、クリントン候補は勝率71%で、トランプ候補の勝率は29%。だが、ふたを開けてみると、激戦州をきわどく制したのはトランプ氏の方だった。
 実のところ、ほかの世論調査会社や大手メディアは98%とか85%といった数字を掲げてクリントン氏圧勝を予想していた。トランプ氏辛勝の余地を最も高い数字で表現したのはシルバー氏だったが、その評判はいっとき地に落ちた。
 シルバー氏によれば、投資や賭博と同じく期待値や確率論の対象なのに、こと選挙となると人は非合理化する。「歴史の正しい側面」や「神の思(おぼ)し召し」などやっかいなものを持ち出してくると嘆く。
 本書で、著者が紙幅を割いて訴えるのは事業やカジノで逃げずに賭けることの価値。一方で「選挙オタク」の情熱は薄れつつあると告白する。
 それでも彼の独創的な選挙予測にはいまも関心が高い。たとえば秋の中間選挙で民主党が下院を奪還する確率を85~90%と発表。トランプ信奉者たちの怒りを買って話題の渦中にある。
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Nate Silver 1978年生まれ。米国の作家、統計学者、ポーカープレーヤー。著書に『シグナル&ノイズ』。
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濱野大道訳