なめたけ・原作、真野ろか・作画「ゆーあーすらっがー」 絵が物語るただ者でない存在感
もし高校野球の公式戦に女子も出られるようになったら――。それが実現した世界で、甲子園優勝を目指し野球部で練習に打ち込む1年生が主人公。
男子ばかりの中で好奇の目で見られないのか、実力で男子に勝てるのか。体つきも華奢(きゃしゃ)で、家や学校では失敗ばかりの彼女には、とても乗りこえられそうにない多くの困難が待っている……そんな当然予想される紆余(うよ)曲折は、作中にはほとんど描かれない。むしろ、そんな先入観や懸念を持った周囲の人々を尻目に、幼いころから練習を積み上げ全力で野球に向きあってきた彼女のプレーそのものの力強さが、人々の心に入り込み、いつの間にか周囲を巻き込んでいく展開が中心に描かれる。
ひ弱そうな見た目の主人公が、素振りをした瞬間、周囲の見る目が変わる。バットのスイングが人々の懸念や疑問を振り払い、いつしか彼女を応援したい気持ちにさせる。下手に描くと説得力のない内容になりそうだが、それを支えているのが卓越した絵の力だ。普段はぱっとしない主人公がバットを構えて立っただけで、突然ただ者ではない存在感が絵からありありと伝わる。ここぞという場面で言葉に頼らず絵そのものが物語り、読む者の心を強くとらえていく。続刊が楽しみな作品だ。=朝日新聞2026年9月5日掲載