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女性警察官の喜怒哀楽、赤裸々に

『ハコヅメ 交番女子の逆襲』(1) [作]泰三子

 安定収入が目的で公務員なら何でもよかった新米女子警察官と、とある理由で交番勤務に回された元刑事課の敏腕美人部長。この凸凹コンビを中心に、地方都市の警察官の仕事ぶりを赤裸々に描く。
 何よりまず女芸人はだしの2人のキレッキレの会話に笑う。〈警察官の主な仕事なんてサンドバッグなの〉〈サンドバッグって仕事ですか?〉〈何かあっても遺族は大切にしてもらえるよ〉〈生きてる職員は大切にしてもらえないんでしょうか?〉とか、身もフタもないにもほどがある。
 しかし、単なるコメディでは終わらない。しょうもない通報に愚痴りながらも現場に急行し、市民からのクレームや上司の無茶(むちゃ)振りにも耐え、書類の山と格闘する。そんな“仕事のリアリティ”に共感を覚える人は多いだろう。しかも、ストーリー的には意外とグッとくる場面も仕込まれているから侮れない。男社会のなかで働く女性警察官のつらさも現代的テーマだ。
 某県警に10年勤めたという作者だけに、描写には実感がこもる。作中で〈ブラック役所〉と自虐しながらも決して暴露本ではない。喜怒哀楽ある普通の人たちが働く姿を愛情を持って描いた、お仕事マンガの秀作である
。=朝日新聞2018年6月2日掲載