「直木賞物語」書評 とらえどころのない文学賞
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2014年02月23日
直木賞物語
著者:川口 則弘
出版社:バジリコ
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784862382061
発売⽇:
サイズ: 20cm/491p
直木賞物語 [著]川口則弘
著者は直木賞が好きで資料を集めてきたシステムエンジニア。直木賞は芥川賞と違って候補作の書誌など基礎的な資料すらおろそかにされてきたという。そんな中、丹念に資料を調べ、第1回(1935年)から昨年までの選考会の様子を伝える。山本周五郎の受賞拒絶、石原慎太郎の芥川賞受賞フィーバーによる余波で直木賞も世間の認知度が高まったこと、城山三郎が選考委員を辞した理由とされる80年代前半の選考会の雰囲気、横山秀夫の直木賞決別宣言、本屋大賞の出現……。扱う対象範囲が芥川賞より幅広いためか、とらえどころのない実態が浮かび上がってきて面白い。世の中の動きと直木賞との関係も興味深い。
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バジリコ・2520円