田中啓文「ハナシがうごく!ー笑酔亭梅寿謎解噺4」書評 落語 謎解き ほろり青春物語
評者: 田中貴子
/ 朝⽇新聞掲載:2010年05月02日

ハナシがうごく! (笑酔亭梅寿謎解噺)
著者:田中 啓文
出版社:集英社
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784087713411
発売⽇:
サイズ: 20cm/391p
ハナシがうごく!ー笑酔亭梅寿謎解噺4 [著]田中啓文
ちょっとおつきあい願います。金髪頭の元バイク乗りの竜二くんが落語家の偏屈おやじ、笑酔亭梅寿に弟子入りしてもう3年。落語のネタと謎解きが重なる趣向のこのシリーズも4冊目になりました。早いでんな。
落語ブームとかいわれても古典落語を生で聞く機会はあまりありませんが、この本ではネタになっている上方落語を月亭八天が解説してはるんで、ご存じない方でも楽しめるようになっておりますからご安心。
今回は、年季明けを迎えた梅駆(ばいく)こと竜二が「落語って何や」という疑問を、登場するいろんな落語家の落語観に接するたびに考えてゆくという、竜二の成長物語の趣がございます。
音声処理してCDに録音した落語は「死んだ落語」なんか、しかし、ミスばっかりでお客を笑わせられへん落語も死んでるんちがうか。竜二は現代の青年として落語の将来を考えます。
そのぶん謎解きの味わいは薄うなりましたが、上方落語に少ないといわれる人情噺の風味が増して、魅力的になりました。
私の好きな「猫の忠信(ただのぶ)」も使われておりますが、決して「ただ読み」はしたらあきまへん。
田中貴子(甲南大学教授)
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集英社・1995円