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映画「食べる女」に出演・壇蜜さんインタビュー 食もセックスも腹八分目

文:五月女菜穂、写真:斎藤卓行

――まずは、原作小説の感想を教えてください。

 短編集は読みやすいなぁと思いました。その中でも、食べるということと、食が傷を癒して立ち直るきっかけになるということが全部繋がっていて。食べることに励まされている人たちがいっぱい描かれているなぁと思いました。

 映画には残念ながら出てきませんが、「花嫁の父」という章が好きです。父と娘がつくね鍋をつつきながら、結婚を切り出す。その緊張感が伝わってきて、オチが好きです。

――映画版では、8人の女性それぞれの食と性にまつわるエピソードが描かれています。

 8人は、いろんな縁で、古書店である「モチの家」という一つの場所に集まる設定です。互いに嫉妬したり、やり込めたりしない、とても清らかな空間を持っている人たちですよね。

 あと、見ればうっかりお腹がすくような映画です。私は、あまり食にはこだわりがない人間ですが、映画の中に出てくる、手羽先のローストを試しました。

――この映画で壇蜜さんが演じるのは、米坂ツヤコという耳のパーツモデルをしている女性です。リュージとミドリという2児の母親でもあります。演じた感想を教えてください。

 ツヤコは、几帳面で、自分が決めたルールを急に変えたくない人。あぁ、生きていくのが大変な人だなぁと思いました。私の場合は、どちらかというと、物事に対して執着がなさすぎて、執着しないことに苛立たれることが多々ありまして、そこでなんか生きにくいところがあるなぁと思っていて。方向性は違えど、私と共通している部分だと思います。

©2018「食べる女」倶楽部
©2018「食べる女」倶楽部

――ツヤコの話は、原作では「マイ・ファーストワイン」というタイトルで、娘のミドリの目線から描かれています。子どもたちと一緒にサンドイッチを作り、別れた元夫のもとへ「ピクニック」に出かけるというストーリーでした。

 すごく規則正しく、きっちりと切って挟んで、サンドイッチを作っている時に、そのサンドイッチがツヤコのこれまでを表しているようで、とても印象的でした。

 ツヤコは子どもたちに対して甘えがあります。自分より力の弱いものに対して、甘えを見せるというのが、私と私が飼っているペットたちの構図とちょっと似ている。本来だったら、世話をしたり、引っ張っていかなきゃいけないものなのに、そこに頼っている感じ。世界がとても狭く完結しているところも、自分とちょっと似ているなって思いました。

――原作の冒頭は「ひとはおいしい食事をすると、体が元気になる。いとしいセックスをすると、心がやさしくなる」という書き出しです。壇蜜さんは「食とセックス」の関係性について、どう思っていらっしゃいますか。

 食もセックスも、上を見ればキリがないし、下を見てもキリがない。羨むと苦しいもの。なんでも八分目がちょうどいいのに。

 性と食の話に関して、みんなの平均を出すと、揉め事しか起きないですよね(笑)。厄介ですよ、二つとも。厄介だけれど、二人きりの世界とか、一つのコミュニティだけで適度に嗜まれる食と性の世界って、すごく充実していると思うから、みんなそれを求めているのかなと思います。

――あまり食にはこだわりがないそうですが、大切な仕事の前などに食べる「勝負飯」はありますか。

 学生の頃はスニッカーズですね。勉強する前に食べて、興奮して、テンション高く宿題をやっていた記憶があります。「お腹が空いたら、スニッカーズだよね!」とCMのように自分に暗示をかけていました。

 あと、冷凍の焼きおにぎりも好きだなぁ。キャッチフレーズで「青春のコバラに」と言っているCMを見て、食べたら青春が戻ってくるのではないかと思って(笑)。CMに影響されて年々勝負飯が変わっているかもしれません。

――ちなみに自炊はされますか? 得意料理は何かございますか?

 します。得意料理は最近だと焼き鳥です。串の刺し方を覚えて、ロースターで焼きます。お酒を飲めないのに、得意料理は酒のつまみなんです(笑)。あとは山芋料理。この夏は酷暑だったので、山芋を入れたオムレツを作ったり、すった山芋をいろんなものにかけて食べたりしていました。

――この『食べる女』は、映画を見てから原作を読むべきでしょうか。それとも原作を読んでから映画を見るべきでしょうか。壇蜜さんのオススメはどちらですか?

 先に小説を読んで「知ってる、知ってる」と言いながら映画を見ると損した気持ちになると思います。できれば、映画ありきで見てほしいかな。「あの描写がない!」と自分の中で揉めて欲しくないので。

 逆に映画を見てから小説を読むと、未公開映像を見たような気持ちになる。人間、ないものが増えることに対しては、よほどネガディブなものじゃない限り受け入れますけど、最初にあったものが減ってしまったり、研ぎ澄まされてしまったりすると、損した気分になると思うので。

――執筆活動もされていますが、普段はどれぐらい本を読みますか? 最近面白かったものは?

 普段は漫画しか読まないです。家か風呂で、1か月に10冊ぐらい漫画を読んでいます。最近は『よしふみとからあげ』という漫画にハマりました。喋るウーパールーパーと、サラリーマン男性のお話なんですけど、面白いんです。私も家にウーパールーパーがいるので、いろいろと想像してしまいます。

――最後に、どんな人に映画を見てほしいか、教えてください。

 この映画は、それぞれ傷ついた人たちが、美味しいものを食べて、どんどん立ち直るきっかけをもらっていくという映画だと思うんです。結果、みんながハッピーエンドにはなっていないですけど、自分も美味しいものを食べたら何か見方が変わるんじゃないかなという期待をしてほしいです。

 特に10代の人に見てほしいですね。大人の女性は思うほど、怖かったり、しんどくないぞと伝えたい。傷ついて立ち直ろうとしているところは、いつか絶対自分も似たような思いをするだろうから見ておいてほしいかなと思います。

「好書好日」掲載記事から

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