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新潮クレスト20年、読者との幸せな関係

  名優トム・ハンクスが作家デビューし、新潮クレスト・ブックスから短編集『変わったタイプ』(小川高義訳)を刊行した。数社が邦訳を望んだ中で、シリーズの収録作を見て本人が決めたといい、「クレストから出る」ことが有名人の余技でないことを物語る。
 クレストは今年創刊20周年。シュリンク『朗読者』、ラヒリ『停電の夜に』……知られざる海外作家と日本の読者を結んできた。記念の無料冊子も作成。149作中、約40点が1万部超。読者は3千人ともいわれる海外文学では人気レーベルだが、編集部はなく作品ごとに編集者が手を挙げる方式。創刊2年目から関わる須貝利恵子さんは「これだけは出したいという本を一点ずつ積み上げてきた」。その一冊から人気が出たミランダ・ジュライの初の長編『最初の悪い男』(岸本佐知子訳)も刊行。作家の西加奈子さんが「面白すぎて腹が立った」と語った傑作だ。
 「地味で無名な作家の短編集でも、クレストの読者には届く信頼感がある」と須貝さん。読者とレーベルの幸せな関係は、一緒に築いたもの。末永く続いて欲しい。(滝沢文那)=朝日新聞2018年9月22日掲載