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「奇跡の本屋をつくりたい」書評 本には人生を変える力がある

評者: 都甲幸治 / 朝⽇新聞掲載:2018年10月13日
奇跡の本屋をつくりたい くすみ書房のオヤジが残したもの 著者:久住 邦晴 出版社:ミシマ社 ジャンル:本・読書・出版・全集

ISBN: 9784909394125
発売⽇:
サイズ: 17cm/203p

奇跡の本屋をつくりたい くすみ書房のオヤジが残したもの [著]久住邦晴

 かつて札幌に奇跡の本屋が存在した。親から継いだ書店の経営がうまくいかず、店主の久住さんは心が折れてしまう。しかし息子が白血病で亡くなると、このまま店を潰すわけにはいかない、と強く決意する。
 売れない文庫を1500冊並べてフェアをする。毎日、午後5時になると店内でお客さんが朗読をする。常識破りの企画をマスコミが取り上げ、人が集まり、出会いが生まれる。
 なかでも重要なのが「本屋のオヤジのおせっかい」というフェアだ。中学生が読んで面白いと思うだろう本を、心を込めて500冊選ぶ。どうしてそこまでするのか。本には人生を変える力があると、久住さんが本気で信じているからだ。
 やがて妻ががんになり、店はつぶれ、本人もがんに倒れる。それでも、本を通して子供を育て地域に命を与える、という久住さんの遺志は死なない。いったん生まれた奇跡はまだ消えていない。