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猫に出会えて、ビールも飲める楽園のような本屋ができたわけ「Cat's Meow Books」店主・安村正也さんに聞く

撮影・中 恵美子

 「猫と本とビールがある暮らし」。そんな余生を夢見ていた僕が、会社勤めをしているうちに猫の本屋を開きたいと思ったのは2016年春のこと。マーケティング会社で働き続けて「このままの人生じゃつまらない」とモヤモヤ考えるようになり、50歳目前に貯金が1000万円貯まったタイミングで準備を始めました。

 といっても、普通のサラリーマンに書店経営のことなんてまったくわかりません。そこで本屋開業のセミナーへ通って、先輩方のアドバイスを受けることに。短期集中で多くの学びと出会いに恵まれたおかげで、まずクラウドファンディングによる支援金の募集で開業資金の一部を調達。勢いで買った中古戸建ての自宅兼店舗へのフルリノベーションも、支援者の協力を借りて実現することができました。

 準備から開業までの一年間で実感したのは、ひとりでも多くの方から共感を得ることの大切さです。夢の猫本屋を趣味や自己満足で終わらせることなく、収益もあげたい。お客様に見捨てられずに続けていきたい。そのためには何をして、何を伝えればいいのか? 自分がお客様だったらこの店のことをどう思うか? そういうことを徹底的に考える習慣は、賛同者に支援金を募るクラウドファンディングで身につきました。

「猫と助け合う本屋」をコンセプトにオープンしたお店の名前は「Cat's Meow Books(キャッツミャウブックス)」。「cat's meow」はアメリカの俗語で「素晴らしい/最高のもの(人)」という意味です。店員は5匹の元保護猫。お店で扱っているのは猫が出てくる本やマンガだけ。また、元保護猫を妻と育てていたことが猫本屋を夢見るきっかけになったこともあり、売上げの10%は猫の保護活動に寄附しています。

 開店前は、岡山の知り合いから、「猫なんてそこらへんを歩いてんのに、そんなお店やってどうすんの?」と言われました。確かに、言われてみればそうだけど、都会暮らしでペットが飼えない本好きの方がきっと来てくれるはず。そう思って期待していたところ、東京の方だけでなく、全国各地から足を運んでくださる方も結構いらっしゃるのです。特に猫の保護活動をされている方々は行動的で、お店のコンセプトに共感して遠くから来てくださる方が多いですね。一方で、平日の昼間に京都方面からいらっしゃって、何万円分も古本を爆買いして帰られる紳士の方も。最近は、平日の昼間でも大ジョッキでビールを飲みながら、猫や本を眺めている女性もいらっしゃる。そうやって自由きままに立ち寄れる居場所というステータスもいいなと、嬉しく思っています。

 僕にとって、会社の仕事は「ライスワーク」で生活のための仕事。猫本屋は「ライフワーク」で自分がやりたい仕事。役割が違う2人の自分がそれぞれ社会的ポジションを得ることで、承認欲求も2倍満たされました。人生100年時代。仕事はたくさんすればするほど楽しくなる。パラレルキャリアで自分の世界を2つ持ったことで、その幸せを実感しています。