『いま君に伝えたいお金の話』 [著]村上世彰
かの村上ファンド創設者が子ども向けに書いたマネー教育の本。お金に振り回されない秘訣(ひけつ)を知ろうと、大人にも読まれているようだ。
お金と上手に付き合う極意は「稼いで貯(た)めて、回して増やす」に尽きるという。お金は社会における血液のようなものなので、お金のめぐりが悪いと社会の健康が損なわれる。だから企業の内部留保のように貯め込まず、手元から一旦(いったん)放せと説く。「流れ」を止めないことが肝心なのだ。
著者は、10歳から株式投資を始めたという強者(つわもの)だが、それを勧めた父親の教えが振るっている。「お金は寂しがりや」で仲間のいるところに行きたがる。そのため仲間が増え始めると、ドドドッと一気に集まってくるらしい。
子どもにとって学びの多い内容だが、物事を数字でとらえる、期待値(自分なりに割り出した儲〈もう〉かる確率)で考えるといった習慣は大人にも役立ちそう。自分の場合、商家で育ったことが生きたマネー教育だったと気づかされた。
お金と向き合う機会の少ない日本の子どもは「お金=汚いもの」と考えがちだという。「人のために使ったとき」にこそお金は輝くと、「心が豊かになるお金の使い方」を促しているのが印象的だ。=朝日新聞2018年11月3日掲載