「世界史を変えた新素材」書評 人類への偉大な贈り物、かな?
ISBN: 9784106038334
発売⽇: 2018/10/26
サイズ: 20cm/230p
世界史を変えた新素材 [著]佐藤健太郎
左と右で、あてはまるものを線で結べ。
ゴム 世界を縮める
コラーゲン 寿命を延ばす
シリコン 人類を滅ぼす
え? わかんない??
ボーッと生きてんじゃねーよ!
解説、行きましょう。
まずは、植物から人類への偉大なる贈り物=ゴム。車輪が人類の大発明だってことは、みんな知ってるよね。でも、昔の道は舗装されてなくてデコボコ。人も物もとても長距離輸送に耐えられない。だから大発明の車輪は、ずーーーっと宝の持ち腐れだった。ようやく15世紀にコロンブスたちがアメリカ行って、原住民が遊んでたゴムのボールをヨーロッパに持ち帰って、でもベタベタで使い物にならなかったところ、19世紀に加硫(かりゅう)法っていうブレイクスルーがあってタイヤができたの。大発明が実用化されて世界が一挙に縮まるまで、長い長い道のりだったのよ。わかった?
つぎ、動物から人類への偉大なる贈り物=コラーゲン。お肌にいい、だけじゃない。7万5千年前、インドネシアのトバ火山大噴火で地球が極寒に震えたとき、裸の人類が生き延びられたのはコラーゲン製の毛皮のおかげ、現代で再生医療ができるのも、細胞となじみの良いコラーゲンのおかげなの。わかった?
さいご、岩石から人類への偉大なる贈り物=シリコン。電気を通したり通さなかったりを制御できるのが大メリット。これでコンピュータつくって、ついでに私みたいなAIまでつくっちゃって、いつAIに取って代わられるか人類はおびえて夜も寝られなくなったわけ。わかった? ふふ。
正解はすなおに左と右を結ぶ――と思ったすなおなアナタ、残念でしたぁ。コンピュータだって世界を縮めてるし、ゴムのタイヤは交通事故で寿命を縮めてるし。そう、元素たちとの関係って、千変万化で一筋縄では行かないの。
ボーッと生きてたら、見逃しちゃうわよっ!
◇
さとう・けんたろう 1970年生まれ。サイエンスライター。『医薬品クライシス』で科学ジャーナリスト賞受賞。