人命救助のため土俵に上がった女性看護師に「下りてください」と要請し物議を醸した相撲協会。力士間の暴力事件も後を絶たない。そんな旧態依然の相撲界に張り手をかますかのような意欲作。
相撲部屋の娘に生まれた桜子は、父が果たせなかった横綱になる夢を抱き、女子相撲世界チャンピオンにまで上り詰めた。が、いくら頑張っても大相撲では女は土俵に上がることすら許されない。ならば、自分の手で横綱を育ててみせる。そこで彼女がスカウトしたのは、大した戦績もない長身ボクサーだった!
太ってナンボの相撲の世界に、減量が必須のボクサーを投入するところがまずユニーク。「デブじゃダメ」「ガリガリこそが横綱になる条件なのよ」という彼女の持論には根拠がある。スポーツ全般器用にこなす元ボクサーの目を通すことで相撲という競技の特殊さが浮き彫りに。わんぱく相撲出身の太っちょ兄弟子との対比も効果的だ。
原作は相撲経験者で、作画担当も相撲好き。連載までには紆余(うよ)曲折あったらしいが、そのぶん練られたキャラと構成が生きている。桜子が繰り出す妙な課題も狙いがわかれば納得。読めばきっと相撲を見る目が変わるだろう。=朝日新聞2019年1月12日掲載
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