1. HOME
  2. 書評
  3. ハイテクローテク総動員の発見記

ハイテクローテク総動員の発見記

評者: 山室恭子 / 朝⽇新聞掲載:2019年01月19日
海底に眠る蒙古襲来 水中考古学の挑戦 (歴史文化ライブラリー) 著者:池田 榮史 出版社:吉川弘文館 ジャンル:歴史・地理・民俗

ISBN: 9784642058780
発売⽇: 2018/11/16
サイズ: 19cm/253p

海底に眠る蒙古襲来 水中考古学の挑戦 [著]池田榮史

 七百と三十年、かくれんぼしてきた。長崎は鷹島(たかしま)の沖合二百メートルにひっそり身を沈めて。はるか大陸から、ここまで漕ぎ着いたんだ、むざむざ海のもくずなんかになるもんかと、ずうっと誰かを待っていた。
 やってきた。初めはビームビーム、音波探査だ。苦戦してる。何かあるぞと潜ってみても養殖筏(いかだ)の残骸とかハズレ続き。そりゃそうさ。ボクは海底の泥のなかに埋まってる。
 次はザクッザクッ、突き棒調査だ。ダイバーが手にした棒で海底をくまなく突いて回る。手応えで泥か貝殻か木か分かるんだって。
 さいごはドレッジ攻撃ぶわーっ。ホースで海水を噴射して泥を取り除く。巻き上がる泥のかなたに、ついに「元軍船発見」の大ニュース! 実測図を描きに潜ってきた学者さんが海中でも「えんぴつ」使ってるのに笑っちゃった。ハイテクローテク総動員だ。
 ありがとう、よく見つけてくれたね。ボクの仲間たちも早く見つけてね。