プロレス文化研究会(プロ文研)の代表を1998年の旗揚げから務め、スポーツとエンターテインメントの境界にあるプロレスというジャンルが、社会にどう受容されてきたかを研究している。
12月に刊行した論集「『プロレス』という文化」(ミネルヴァ書房)には、いわゆる「プロレス本」のような関係者の肉声は一切載っていない。「プロレスは事実と虚構があいまいな『虚実皮膜(きょじつひまく)』の世界。当事者に直接聞いたことが真実とは限りません」。書籍や、プロレス専門ではない新聞、雑誌の記事などから対象に迫る「文献主義」を貫く。
高校で世界史を教えながら、大阪大学大学院に社会人入学。日本にプロレス人気を定着させた力道山の研究で博士号を取得した。2008年発表の評伝「力道山」(同社)も高い評価を受けた。
プロ文研の例会は20年間、京都で開催してきた。「プロレス関係者が多い首都圏と離れているからこそ、自由で客観的な議論ができる」。ファンの高年齢化が進む中で、プロレスを「文化」として知的に楽しむ層が広がることを期待している。(編集委員・今井邦彦)=朝日新聞2019年1月17日掲載
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