「あの小説をたべたい」は、好書好日編集部が小説に登場するごはんやおやつを料理し、食べることで、その物語のエッセンスを取り込み、小説の世界観を皆さんと共有する記録です。
今回味わうのは、原田マハ『生きるぼくら』。
学校でいじめにあい、引きこもりとなった24歳の麻生人生(あそう・じんせい)。ある日、一緒に暮らしていた母親が家を出て行ってしまい、4年ぶりに外に出る決意をします。
人生は一通の年賀状を頼りに祖母がいる長野県蓼科へ。想定外の事態に遭遇しながらも、祖母の田んぼではじめての米づくりをすることになります。
米づくりを通して、人の温もりや生きることの意味を知り、成長していく若者の姿を描いた作品です。
「祈りのかたち」を食べる
作中で象徴的に登場する食べ物がおにぎり。おにぎりは、やはりご飯のおいしさがカギとなる食べ物です。
ふわっと真っ白い湯気が上がった。たちまち、香ばしいご飯の匂いに包まれる。釜の中をのぞくと、真っ白な米粒が立ち並んで、つやつやと輝いている。
これを読むだけで白米が無性に食べたくなります。人生たちのように羽釜で炊きたいところですが、さすがに羽釜はないので土鍋で炊いてみることに。いつものお米でも十分おいしく炊けました。
ご飯が炊けたら、あとは握るだけ。具は人生にとって良くも悪くも思い出深い、梅干しを選びました。最後に海苔を巻いてできあがりです。
ふたつの手と手を合わせて、ほっこりと握る。それがおにぎりのかたち。(中略)作った人の祈りのかたちなんだよな。
そう思って食べると、おにぎりってシンプルだけど最高においしい食べ物なのかもしれません。