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原作ファンに納得してもらうため、自分の個性は消すべき 本郷奏多さん、映画「キングダム」に出演

文:根津香菜子、写真:樋口涼

――原作を読んだ感想と、成蟜役のオファーが来た時の気持ちを教えてください。

 原作の漫画『キングダム』は、オファーを頂いてから読んだのですが、とにかく面白かったです。友情や夢、戦いなど、男の子が好きなものが全部組み込まれていて、ワクワクする漫画という印象でした。漫画を読みながら自分でも「どのキャラが僕に来そうかな」と考えたけど、やっぱり成蟜でしたね(笑)。これまでも、ひねくれた役を演じることが多かったので、戦闘能力は低いけど口だけは達者で、性格が悪い成蟜役は、しっくりきました。

――漫画実写化の出演経験が多い本郷さんですが、原作のキャラクターを演じる際に心がけている事は何でしょうか?

 どの作品でも毎回共通して一番に思うことは、なるべく原作漫画やアニメのキャラクターのイメージ通りに演じたいということです。原作のキャラクターをなぞって、ものまねしているというか、可能な限り再現したい。僕は原作が一番「偉いもの」だと思っているので、実写化したときに一番注目してくれるのも、一番熱心に観てくれるのも原作ファンの方だと思うんです。その人たちが観た時に「なんじゃこりゃ」って思われる作品になるのは失礼なので、役者個人のオリジナリティーは消すべきだと思って演じています。

――佐藤信介監督作品への出演は今回が4作目ですが、何かアドバイスなどありましたか?

 佐藤さんは本当に大好きな監督で、本作でも撮影に入る前から色々な話をしました。成蟜は「父母共に王族の血を引いている自分」のプライドが高く、横暴な身の振る舞いやセリフが多いのですが、それを役者として演じるのではなく「正当な王家の血を引く自分こそが本当に優れていると、本郷くん自身が心から思って欲しい」と言われたのが印象に残っています。当時は本当にそういう考え方があったと思うけど、現代に生きる僕らにはたどり着けない思考だし、その高いプライドと誇りがあることによって、成蟜の芯の部分も出てくるのだと教えていただきました。

――悪役で憎まれ役であるにも関わらず、原作ファンの間では、主人公の信や王の嬴政に負けず劣らず人気のある成蟜ですが、演じてみていかがでしたか?

 あんな風にわかりやすく悪態をつくことなんて、現実にやると嫌われてしまいますから(笑)。それを思いっきりできるのは、成蟜というキャラクターだからこそだと思うので、楽しみながら演じました。

 今回の映画は原作の1~5巻までを映像化しているので、僕が演じたのは原作の物語全体でいうと「前半の成蟜」なんです。本作では、最初から最後までとことん“嫌な悪いヤツ”で通っているので、この映画だけを観て成蟜を好きになる人は多分一人もいないんじゃないかな。でも、それが僕の狙いでもあるんです。映画を観たお客さんに「こいつ本当に嫌だな」と思ってもらえることが、演じた僕としては一番嬉しいことですから。

――片眉だけ上げて睨みつけたり、片方の口の端を少しだけ上げて不敵な笑みを浮かべたりと、表情の微妙な変化からも成蟜の小憎たらしさがひしひしと伝わってきました。 

 原作の漫画で、成蟜がそういう表情をしている場面を見つけたんです。漫画を読んでいる方が映画を観た時に「あ、この顔」って思い出せるように、出来る限りその表情を再現したつもりです。椅子の座り方も、片肘をついて足を上げている場面が印象的で、成蟜というキャラクターをとても表している座り方だなと思ったんです。漫画を読んでいると色々なヒントが転がっているので、成蟜を演じるうえでも、自分が「いいな」と思った部分と、原作ファンの方が「いいな」って思う部分は、なるべく再現したいと思っています。

Ⓒ原泰久/集英社 Ⓒ2019映画「キングダム」製作委員会

――確かに、漫画だと眉間のシワの深さとか、表情の細部が分かりやすく描かれていますよね。撮影は中国でも行われたそうですが、何か思い出があれば教えてください。

 印象的だったのは、城の上から8万人の兵に向かって演説する、というシーンです。実際は現地のエキストラ何百人の前で演じたんですが、僕が日本語でセリフを話していることもあり、あちらの国民性みたいなものも相まってか、みなさんがすぐに飽きてしまうんですよ。カットがかったら、みんな「オッケー」を待たずに重い鎧とかを勝手に外したり、その場で横になってお昼寝しちゃったりする人もいて、自由なんです。僕やスタッフさんは集中したいのに「この人たちを飽きさせちゃいけない!」と思い「もう少しで終わるから頑張ってね」と、傍若無人の成蟜役なのに、兵士役の人たちに気を使って撮影したことが思い出です(笑)。

――本郷さんは普段も漫画を読むことが多いとのことですが、どんなジャンルがお好きですか?

 昔からガンダムが好きなので、戦闘メカが出てくる作品やSF漫画をよく読みます。中でも『ぼくらの』という作品は、同じSF 好きの友達に「これ面白いよ。ガンダムとかエヴァンゲリオンが好きなら読んでみて」と薦められて読んだらハマったんです。ロボットものとはいえ、バトルにはあまり重きを置かず、ロボットの操縦者に選ばれた15人の中学生の心の葛藤を描いているところが気に入っています。