PIXAR(ピクサー)は、「トイ・ストーリー」などのメガヒットで知られる米のアニメーション企業。同時にスティーブ・ジョブズが果てるともない投資を自腹で繰り返し、最後に彼をビリオネア(大富豪)に押し上げた奇跡の会社としても有名だ。
今までは〝ジョブズの〟ピクサーとして語られてきた同社を、本書ではCFO(最高財務責任者)として支え続けた著者の視点から描く。
ジョブズからの電話を機に、弁護士・会社経営者を経て、ピクサーに転身した著者。入ってみたら、累積赤字5千万ドル、現場とジョブズの不協和音、資金提供者ディズニーとのがんじがらめの契約と、困難が渦巻いていた。
映画のような山あり谷ありの中で、クライマックスは、ディズニーに追い詰められたピクサーが、リスク管理よりも「クリエイティブなビジョン」を優先させ、そこから大成功を収める場面。シリコンバレー精神、万歳だ。
その裏には「クリエイティブな精神を殺すことなく、戦略や指示命令系統、官僚的な手続き類を導入」したマネジメント層がいた。著者をはじめとするそれらの人々のこつこつと真摯な仕事ぶりにアメリカの底力を見る。=朝日新聞2019年5月4日掲載
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