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「科学する心」 文学で味付けされた自在な科学考

評者: 黒沢大陸 / 朝⽇新聞掲載:2019年05月11日
科学する心 著者:池澤夏樹 出版社:集英社インターナショナル ジャンル:自然科学・科学史

価格:1944円
ISBN: 9784797673722
発売⽇: 2019/04/05
サイズ: 20cm/261p

大学で物理学を学び、作品に科学的題材を織り込んできた池澤夏樹。「科学する心」を持ち続けた作家が、人工知能、進化論、永遠と無限、日常の科学などを「文学的まなざし」を保ちつつ…

科学する心 [著]池澤夏樹

 科学の探究は、大学の研究室だけのことではない。体験や見聞きしたことが事実なのか考え、真偽について思いをめぐらせれば、意識しなくても「科学する」ことにつながっていく。
 雑誌に掲載された12の科学エッセーで構成された本書が、科学思考の世界に導いていく。料理の手順の意味を考えること、鳥や昆虫の観察、本を読んで気になった内容の整理。題材が既知の事柄でも、その運びと切り口に、著者の思索の冒険に同行して一緒に発見している気持ちになる。
 環境の激変による不条理な絶滅を語った『理不尽な進化』、人類の歴史を巨視的に捉えた『サピエンス全史』、話題となった本の読み解きも目を引く。
 文学で味付けされた自在な展開は、関連づけの妙にうなりながらも、ときに話題の飛び方にいらだつこともある。それも悪くないのは、思いつけない視点であり、固定的な発想への戒めになるからかも知れない。