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柚木麻子『あまからカルテット』の稲荷寿司を動画で味わう

「彼の匂い」を食べる  柚木麻子『あまからカルテット』

 

 「あの小説をたべたい」は、好書好日編集部が小説に登場するごはんやおやつを料理し、食べることで、その物語のエッセンスを取り込み、小説の世界観を皆さんと共有する記録です。

 今回は、柚木麻子『あまからカルテット』を味わいます。

 編集者の薫子、美容部員の満里子、ピアノ教師の咲子、専業主婦の由香子は、女子校時代からの仲良し4人組。30歳を目の前に恋や仕事に悩みは尽きないものの、山あり谷ありの日々を邁進していきます。そこにはいつも女同士の友情と美味しい食べ物があるのでした。ガールズパワー全開の連作短編集です。

「彼の匂い」を食べる

 その中から選んだ一編が「恋する稲荷寿司」。

 男っ気のない咲子は、花火大会でたまたま会話を交わした男性に淡い恋心を抱きます。ところが、名前も連絡先も聞けずじまい。おすそわけしてもらった美味しいお稲荷さんだけが唯一の手がかりという状況に。咲子の久々の恋バナに、薫子、満里子、由香子の3人は、何とか「お稲荷さんの君」を捜し出そうと奔走します。

 今回はそんな物語の重要な鍵を握る、お稲荷さんを作ってみました。

じゅっと煮汁が染み出した。こっくりと甘く煮ふくめられた油揚げ、硬めに炊かれたすし飯がほろりと崩れていく。咲子はため息を漏らした。

 ややネタバレになりますが、こくのある油揚げの甘さは黒糖によるもの。親友の恋路がかかっているとはいえ、これを舌だけで探し当てるというのが、女の友情のすごいところでもあります。

「彼、すごく手が大きかったの。このお稲荷さんもすごく大きいでしょう? それになんとなく、彼の匂いがするような気がする」

 というわけで、白ごまをまぜたご飯を思い切りよく詰め込みました。むっちり稲荷は、ジューシーで食べ応えたっぷり。たくさん作って誰かとシェアすれば、恋が生まれるかもしれません。