私には行く度に元気になれる街がある。それは、韓国のソウル。LCC(格安航空券)の登場で、だいぶ日本と韓国の旅がしやすくなった。下手をしたら、国内旅行より安く韓国に行くことができるので、「週末韓国」を楽しむ人もきっと増えているだろう。私もこれまで何度も足を運んでいる街である。行ったことのない場所に行きたがる傾向にあるので、これはとても珍しいことだ。
エステに買い物にエンタメに。ソウルの旅の魅力はたくさんあるけれど、やはり一番楽しみにしていることは、食。ソウルに行った時はとにかく食べる。ダイエット中であっても、カロリーを気にしていても、そんなことは関係ない。切に胃袋が4つぐらい欲しくなる。韓国料理を腹一杯食べること。それが、ソウルの旅の主な目的となる。
必ずと言っていいほど食べるのが、参鶏湯(サムゲタン)だ。鶏肉にもち米や高麗人参などの漢方を詰めて煮込んだ料理である。くたくたに煮込んだ鶏肉はぷりぷりしていて、コラーゲンたっぷりで、絶妙な塩っけがたまらない。風邪をこじらせた時や、寒くて体が冷えた日に、フーフー言いながら、食べたい一品である。
それから「明洞餃子」という店の「カルグクス」もおいしい。鶏ガラベースのスープ、弾力のある麺、ワンタンや野菜、炒めたミンチが入った料理で、ニンニクが効いていて、美味い。キムチが副菜としてついてくるのだが、食べ終わると、“椀子そば状態”ですぐに新しいキムチを盛り付けてくれるのもうれしい。無限に食べられる気がする。
韓国風の焼肉であるサムギョプサルも、日本でも流行ったチーズダッカルビも、シンプルな海鮮チヂミも好きだ。レインボーカラーのケーキや、美味しさよりも見た目重視の可愛いスウィーツなんかもついつい食べてしまう(こちらは主に写真を撮ることが目的だが)。旅の途中、常に何かを食べているのに、「あれも食べたい、これも食べたい」と妄想ばかりがどんどん膨らんでいき、最終的には胃袋が限界を迎える。食欲は満たされるし、パワーもフル充電されるのだが、「次行く時は絶対あそこに行こう」と、早くも再訪の計画を考えていたりする。実に欲深い。
食にまつわるエッセイをまとめた、阿川佐和子『残るは食欲』(新潮文庫)に、こんなエピソードが載っていた。筆者の阿川さんは、ソウルの市場を訪れた際、「木の根っこのジュース」を飲んだそう。「苦いというか渋いというか土臭い」味だったそうだが、「喉の痛みが和らいで、身体にエネルギーが蘇り、ついでに胃腸の動きもすこぶる快調となった」という。「決しておいしくはなかった」が、買って帰ればよかったと思ったそうだ。
旅にはいつも、未練がつきまとう。(128P)
この一文を読んだ時、思った。私のソウルの旅は、いつも“未練”がある、と。だから何度も行きたくなるし、何度行っても飽きないのだろう。……エッセイを書きながらお腹がすいてきた。未練がましく、またソウルに行こうと思う。