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#49 コロナ禍で思うこと また世界のどこかを旅するために

世界一周をしたときに撮影した空の写真。お気に入りの一枚

 HABUさんという空の風景をテーマに世界各地を撮影する写真家の『誰の上にも青空はある』(ヴィレッジブックス)という写真集。空の写真が大好きで、確か10年ほど前に購入したのだけれど、あわせて書かれている言葉たちが、いまの私の思いを代弁してくれているようだ。

どこへいきたいんだろう/自分の生活や仕事をどうしたいんだろう/夢はいったいなんだろう/幸せはどこにあるんだろう/自分の人生をどうしたいんだろう/ぼくの居場所はどこなんだろう/どっちへ向かって歩いていけばいいんだろう

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、1年前には、いや、半年前にも想像もしていなかった世界が今、目の前に広がっている。行きたいと思ったときに、行きたい場所に行くこと。会いたい人と思ったときに、会いたい人に会うこと。これまでは当たり前にやってきたことが、実はとても幸せなことだったのだと気づかされる。

 私にとって、旅は生活の一部で、旅することで自分のリズムや気持ちを整えていたと言っても過言ではないタイプの人間なので、今は移動を自粛することが感染拡大を防止するために絶対に必要なことだと理解しているけれど、先が見えずにただただ長引く「ステイホーム」には戸惑いというか、ゴールのない持久走を走っている感じもして、つらい。

 「旅より命」なんていうことは十分分かっているが、「次の旅はどこに行こう?」と、格安航空券を検索できるアプリで、目的地を「すべての場所」(世界のどこか)と設定して、お得な航空券を探し出す行為も、世界の絶景ばかりが載っている写真集をめくりながらあれこれ夢想する行為も、果たしてこの欲求はいつか報われるのか、頭の片隅で考えてしまう。

モロッコのシャウエンにて。まだまだ行きたい場所がたくさんある

 生まれたばかりの赤子と育児休業中の夫と過ごす「おうち時間」はそれなりに楽しいし、幸せで貴重な時間だとは思うが、知らぬ間に「アフターコロナ」の世界は様変わりをしていそうで、それに自分がきちんと順応できるのかどうか、漠然とした不安もある。オンラインでいろいろできる時代だから助かる面もあるけれど、やっぱりオフラインの「生の状態」でしか味わえない感動や温もり、サプライズや“無駄な時間”が忘れられず、この新しい生活様式を心から受け入れられない自分がどこかにいる。

 …とまぁ、こんな感じで、昨今どうしても落ち込みがちな私だが、最近読んだ本で、励まされた一文を紹介したい。世界約40か国を旅してきた有川真由美さんによる『人生で大切なことは、すべて旅が教えてくれた』(幻冬舎)より。

いつだって私たちは、多かれ少なかれ、旅をしている。未知なる世界を旅するほど、まだ知らない景色が広がっていることを知り、もっと先の景色を見てみたいと駆り立てられて、また旅に出る。大切なのは、どこかにたどり着くことではなく、旅そのもの。きっと人は、旅をするために、旅をしているのだ。(248ページ)

 きっと、家にいても、それは「旅の途中」。自分の内面と向き合う時間なのかもしれないし、次の旅先に向かうトランジットの時間なのかもしれない。そう思うようにして、今をどうにかやり過ごすことにした。さて、いつまで続くのだろう、この「旅」は。