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「平成家族」書評 社会の歪みが個人にのしかかる

評者: 寺尾紗穂 / 朝⽇新聞掲載:2019年06月29日
平成家族 理想と現実の狭間で揺れる人たち 著者:朝日新聞取材班 出版社:朝日新聞出版 ジャンル:社会・時事

ISBN: 9784023317833
発売⽇: 2019/04/19
サイズ: 19cm/278p

変わりゆく現実、追いつかない意識−。結婚、食、働き方、出産などをテーマに、古い制度と新たな価値観の狭間を生きる「平成時代の家族」の姿を追う。『withnews』連載等を書…

平成家族 理想と現実の狭間で揺れる人たち [著]朝日新聞取材班

 数年前同世代の女性が「どうしてこんなに生きづらいんでしょう」と言うのを聞いたとき繊細な人なのかと思った。しかし本書に描かれる多様な困難を前にすると、個人の性格に帰してよいものはほとんどないのでは、と痛感した。とりわけ自立も結婚もしにくい非正規シングルは切ない。同居の親との喧嘩も増え、休日は現実逃避で眠って過ごすケースもある。社会の歪みが個人にのしかかる。
 興味深いのは、率先して育児に関わった男性の、育児しながら仕事もバリバリなんて無理という声。真面目に子育てするほど会社の中で浮いていく。それを機に転職する例、会社が変わった例は注目されるが、「イクメン」賛美の風潮の中、現実に苦しむ声にも耳を傾けねば社会は変わらないだろう。誰もあらゆる人のことは想像できないが、この本でいくつもの人生と悲哀を知ることは、一つの時代を俯瞰する行為にも似ているのかもしれない。