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映画「初恋ロスタイム」で初主演のM!LK・板垣瑞生さん 「役者が感じたものを演じてこそ映像化の意味がある」

文:根津香菜子、写真:有村蓮

――まずは、原作を読んだ感想から教えてください。

 自分以外の時間が止まっているというファンタジーなので、最初は「THE・青春」ものなのかな?と思ったんです。でも読み進めていくうちに、現実でもあり得るかもしれない世界として描いている作品だなと感じました。ラブストーリーの展開も、無理に壁ドンしたりキスしたり、というドラマチックな話ではなく、自転車で二人乗りしたり、一緒にお弁当を食べたり――。そんな普通のカップルもするようなことを「ロスタイム」で楽しむうちに、徐々に惹かれあっていくというステキな物語がちゃんと存在しているのがすごくいいなぁと思います。

 この作品は、キラキラした中にも真実味があると思うので、リアリティを失したくなかったんですよ。どんなにキラキラしたフィクションだとしても、この映画を観る人が「これって本当にあることなのかも」と思ってくれるような作品にしたいと思いました。

©2019「初恋ロスタイム」製作委員会
©2019「初恋ロスタイム」製作委員会

――ファンタジーの要素はありつつも、作品の大元には血の通ったストーリーがありますよね。海辺や夕日などの美しい映像もステキでしたが、板垣さんが特にお好きなシーンはどこですか?

 自転車で時音のところに行くシーンです。僕は体力には自信があるほうなんですけど、坂道を上るシーンは何回も撮って、最後のほうはクッタクタでした(笑)。それくらい必死に進んでいく孝司の必死さは、リアルに近いものが出せたと思います。このシーンを観た人に「苦しんでいる時にこんな人が来てくれたらいいな」と思ってもらえたらと、がんばりました。

――「ソロモンの偽証」や「精霊の守り人」など、原作を映像化した作品の出演が続いていますが、原作の役を演じるうえで何か心がけていることはありますか?

 僕はいい意味で原作を気にしないようにしています。もちろん、原作は読みますし、トレースする部分はあるんですけど、原作がこうだからという考えはしたくないんです。原作に沿うことはすごく大事だと思うけど「原作でこうやっていたから」と思ってやるお芝居と、実際に演じてみて、そうなってしまうお芝居は全然違うと思うんです。原作という答案用紙みたいなものが一つのルーツとしてあるけど、役者が演じるから初めて役が生きて、原作に乗っかったいいものができる。僕は原作を映像化する理由って、そこだと思うので「自分がこの人だったらこうする」という考えを大切にしたいと思っています。

――本作では、孝司や時音それぞれの夢のほかに、孝司のお母さんの夢を叶えたかったお父さんの夢など、いろいろな形の夢が出てきましたが、板垣さんが思う「夢の力」について教えてください。

 夢がある、ないだけで、世界が全然違うんじゃないかって思うんです。たとえ、自分が願っていたようにはならなかったとしても、自分の中で「こうしたい、こういう風になりたい」っていう気持ちがあるだけで、きっとそこではない「いいところ」へ行けると思うし、いいものができる力になると思います。

――ファンの人にとっては、板垣さんが活躍する姿をテレビやライブなどで見ることが「夢」になっていると思うのですが、ご自身が「だれかの夢」になっていることに対して、どう思われますか?

 僕のやっていることが、結果的にだれかの夢になっていたら、それはありがたいことですね。だけど、そのためには色々なものを背負わなきゃいけないので、ネガティブなとらえ方をするとすごく怖いことでもあり、覚悟のいる仕事だと思っています。すべての人の願いを叶えられるかはわからないけど、自分を応援してくれる人たちだけは幸せな気持ちになってほしいと思います。

――個人として俳優のお仕事をする一方、ボーカルダンスユニット「M!LK」のメンバーとしての活動もされていますが、それぞれの違いはありますか?

 どちらの仕事も好きだし、同じような楽しさを感じる時もあるんですけど、やっていることが全然違うから、僕は同じようには考えていないんです。お芝居するときは板垣瑞生としてやらせてもらっているけど、「M!LK」の一員として、ファンの人が目の前にいてパフォーマンスする楽しさは「生もの」なんですよね。それは、宇宙飛行士と工事現場の方の仕事くらい違います。

――そんなに違いますか?(笑) てっきり、宇宙飛行士とNASAで働く人くらいの差かと思いましたが。

 宇宙飛行士の知識は、工事現場では役に立たないので(笑)。僕は役者の仕事と「M!LK」の活動は全く違う気持ちでやっています。一人の体で、二つの気持ちを持ってやっているという不思議な感覚なんです。

 本作が初めての主演でしたが、プレッシャーよりもワクワクする気持ちのほうが大きかったですね。孝司というキャラクターは、そこまで自分の中に「どしっ」と入り込みすぎる役ではないけど、夢や希望のある世界をぎゅっと凝縮した作品なので、撮影後は僕自身も清々しい気持ちになりました。この作品の主演を演じさせていただいたことは、これからの糧になっていくと思います。

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