大学1年のとき、友人たちと読書会なるものをしようということになって、読み始めたのがこの本だ。
妙な説得力のあるK君のイチオシだったが、当初は著者レヴィ=ストロースについて何も知らず、この本で何が問題になっているのかも皆目わからなかった。スタートしてみると、多くの例がオセージ族といった「プリミティブな社会」から採られ、そこで働く思考のあり方について述べられている。が、だから何なんだ? それを考えるためにこそ読み進めていった。
おんぼろのゼミ室を借りた、5、6人での読書会。少し読んではその理解について議論し、議論してはまた読む。著者の他の本や関連本に脱線しては、また戻ってくる。訳者の大橋先生にもお話をうかがった。1冊の本をこれだけじっくり読んだのは生まれて初めてだった。夢中だった。
ただ、そんな風だからなかなか前には進まず、読書会では最後まで読み終えることすらできなかった。でもそれを通して、「だから何?」への答え以上に、著者の思考のかまえが身体に沁(し)み込んできた。内なる「野生の思考」が活性化されたと言ってもいい。それは決して「未開野蛮の思考」ではなく、あらゆる社会に共通して働く思考のあり方で、著者はそれを巧みに実践してもいたからだ。
ともあれ、こうした仕方で本を読むこと、つまり、何かについての情報を手早く抜き出すのではなく、その世界に身をさらし、自身も変わりながら読んでいくこと。それこそ私が書物を考える際の原型となった。=朝日新聞2019年9月18日掲載
編集部一押し!
-
新作映画、もっと楽しむ 映画「沖晴くんの涙を殺して」広瀬アリスさん 「悲劇のヒロインにならないで」監督の助言で挑んだ余命1年の教師役 かわむらあみり
-
-
売れてる本 河内春人「継体天皇」 複数の王統から始まる皇位 古市晃
-
-
杉江松恋「日出る処のニューヒット」 「百年の時効」で3冠の伏尾美紀、新作「誰何」の技巧がたまらない(第42回) 杉江松恋
-
あなたに贈る本 俳優の石坂浩二さんが薦める3冊 若者たちへ いま手にとってみてほしい本 朝日新聞社
-
チケットの裏に 作家と巡るアートとカルチャー 小説、書き直し続ける 鈴木結生 鈴木結生
-
小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 太宰治賞・こがわゆうじろうさん ヤングケアラー、中卒、双極性障害。かわいそうな物語を拒否し、物語る側へ 清繭子
-
トピック 【PR 光文社・創英社・みすず書房・ミネルヴァ書房】プレゼント 朝日新聞1面広告の本、好書好日メルマガ読者計20名様に
-
コラム 「海をわたる言葉 翻訳家ふたりの往復書簡」中江有里さん書評 出逢いの不思議が生んだもう一つの〝家族〟 PR by 集英社
-
トピック 【プレゼント】柄谷行人さん最新作「私の謎 柄谷行人回想録」好書好日メルマガ読者10名様に PR by 講談社
-
インタビュー 平石さなぎさん「ギアをあげて、風を鳴らして」インタビュー 描いてわかった「シスターフッド小説」の魅力 PR by 集英社
-
インタビュー 江國香織さん「外の世界の話を聞かせて」インタビュー 頭の風通し良く、気持ちさっぱり自由になって PR by 集英社
-
インタビュー 【サイン入り本プレゼント】一木けいさん「嵐の中で踊れ」インタビュー 避難所で起きた再生の群像劇 PR by NHK出版