仏の代わりに鬼を拝んで地獄に落ちたおばあさん(富山の昔話)は、現代で言えば周囲に賛同者のいないオタク。重責に耐えかねて天岩戸に閉じこもったアマテラスオオミカミ(『古事記』『日本書紀』)はさしずめ過労気味のキャリアウーマンか。昔話や奇譚(きたん)の登場人物を、血の通った1人の女性としてみずみずしく現代に召喚する『日本のヤバい女の子 静かなる抵抗』(はらだ有彩〈ありさ〉著)を楽しく読んだ。軽妙な口語の翻案に、ふと友だちのあの子の顔が思い浮かぶ。
若さや容姿という評価軸が無批判に受け入れられすぎているこのジェンダー後進国で、規範を疑い、主体性を持って生きるのはつらい。だが、女性の生き方や振る舞い方の正解バリエーションがより少なかった前近代においても、ときに意思を押し通し、運命や社会にちょっぴり抵抗する先輩たちがいた。鬼女、化け物と忌み嫌われるリスクを負ってでも。その事実を勇気に変えようと、きっと、著者は言っている。「ヤバい」というスラングに込められた反語的な肯定も絶妙だ。(板垣麻衣子)=朝日新聞2019年10月5日掲載
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