本当は、この原稿も昨日に終えるはずだった。しかし、机に座ったらおやつを食べ、SNSチェックにいそしみ、そこから買い物サイトに飛び……と、なんてダメな自分。そして、なんでこうなる?
サイエンスライターとして、特にミレニアル世代に人気の著者は、人間のコントロール能力を「獣≒本能」対「調教師≒理性」という2項のせめぎあいにたとえて解説する。「獣」は、あらゆる刺激に反応し、強いパワーを持つ原始的な人間生存のプログラム。ただし現代に生きるのなら、本能にころがってばかりでは、かえって生存が立ち行かなくなる。そこで激しく暴れる獣を食い止める「調教師」を内に育て、集中力を取り戻すことが必要になる。
本書では「脳科学や心理学、栄養学にもとづく数千件を超える研究論文」をベースに、仕事の入り方から食事、睡眠まで、ノウハウを多岐にわたって記す。中で特徴的なのは「マインドフルネス」や「セルフ・イメージング」など、ミレニアル世代に響く「意識高い系」用語が多いこと。
無限大の刺激がただよう中で、集中のためにはクールな内観が欠かせない……ことは分かったが、そこから先はちょっと自信が持てない。=朝日新聞2019年11月2日掲載