英語やフランス語は読めても、「昔の日本語は読めない」という日本人は多いかもしれません。江戸時代以前の文書を目にしたことがある人であれば、それは納得できるでしょう。
江戸時代までは、現在使われるもの以外にもさまざまな文字が存在し、「あ」「そ」などひとつの音に対して複数の文字が使われていました。文書でも「くずし字」と呼ばれる筆記体の文字が使われており、それらは長年日本の文化として根づいていたのです。しかし、明治期に言葉の標準化が求められて学校で教えられる文字は1字1音に整理され、公的な文書も現在の活字体に移行しました。今では、私たちが日常的に昔の仮名やくずし字に触れる機会はほとんどなくなりましたが、古文書解読検定は、そうした日本古来の文字の解読力の向上を目指して、2016年にはじまりました。
一概に「くずし字」と言っても、江戸時代とそれ以前のものとは大きく異なっていると、検定協会代表理事の小林正博さん(68)は語ります。「江戸時代は寺子屋など、教育のシステムがある程度確立されていたこともあり、くずし字は概ね同じ字体で書かれていましたが、室町時代などそれ以前は、人によってばらばらのスタイルでした」。それゆえにくずし字の世界は幅広く、解読には鍛錬が求められます。「変体仮名」のような現在は使われていないひらがなも存在するため、まずはこつこつとそうした文字を覚えていく必要があります。
検定の合格者には、歴史博物館や郷土資料館で実際の古文書の解読に携わる道が開かれています。また古文書サークルなどに所属して、初心者やより若い世代に解読する楽しさや魅力を伝え、地域の生涯学習活動に貢献している人も少なくありません。
昔の文字が読めるようになることには、私たち一人ひとりが、歴史をより自分に引きつけて考える第一歩になります。たとえば、これまで美術展などで素通りしていた古文書を読めるようになれば、そこに登場する人物や役職にも、興味が生まれるでしょう。自分のルーツでもある歴史を知るうえでも、くずし字を学ぶことには意義がありそうです。
【正解】古語とも