堀ちえみさんといえば、1980年代のドラマ「スチュワーデス物語」に出演、「ドジでのろまな亀」の訓練生役で、あまたの失敗にへこたれないキラッキラの笑顔が印象的だった。
そんなちえみさんが、最も進行が進んだ「ステージ4」の口腔(こうくう)がんで2月に手術。闘病とリハビリの日々をつづった著書が『Stage For~ 舌がん「ステージ4」から希望のステージへ』だ。最初は口内炎と思っていた舌の違和感が、硬いしこりに変わり、舌が空気に触れるだけで激痛に襲われるようになったという。手術では舌の6割以上と首のリンパに転移した腫瘍(しゅよう)を切除し、舌根に太ももの皮膚などを移植。食べ物をのみ込む訓練や発声・発語訓練などリハビリにも励んできた。
ちえみさんには夫と7人の子供がいる。手術後の「底なし沼に落ちた」ような不安と絶望から、家族に励まされて踏み出す。また、ステージで歌いたいという気持ちが支えだ。闘病中や踏み出せない人には勇気を与えてくれる本になるだろう。(山根由起子)=朝日新聞2019年11月16日掲載