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「彼岸の図書館」書評 若い夫婦が営む正直な暮らし

評者: 宇野重規 / 朝⽇新聞掲載:2019年11月30日
彼岸の図書館 ぼくたちの「移住」のかたち 著者:青木 真兵 出版社:夕書房 ジャンル:人生訓・人間関係・恋愛

ISBN: 9784909179043
発売⽇: 2019/10/03
サイズ: 20cm/284p

命からがらたどり着いた移住先、奈良県東吉野村でぼくたちが始めたのは、自宅を図書館として開くことだった−。12の対話とエッセイで綴る、「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」とい…

彼岸の図書館 ぼくたちの「移住」のかたち [著]青木真兵、海青子

 古代地中海史の研究者である夫と、図書館の司書をする妻。都市での生活で体の変調を感じた若い夫婦は、奈良県東吉野村に移住する。「命からがら、逃げ延びた」2人が始めたのは私設図書館であった。とはいっても、大きな図書館ではない。自宅を公開し、蔵書を利用者に手にとってもらうことを目的とする、小さな図書館である。しかし、川を渡って訪れる図書館はまさに「彼岸の図書館」であり、現代社会とは違った価値と生き方を求める2人の実験の場所でもある。
 本書を読むと、日本社会が大きな転換点にあることを感じる。地に足のついた生活をしたい、自分の身体と感情に正直な暮らしをしたい。そう思う2人を、人口減少の村が穏やかに受け入れる。社会福祉法人で働くなど、地域の中で居場所を見つけていく著者たちの活動を思わず応援したくなる。知と社会への熱き思いを語る夫と、静かに、印象的な言葉を口にする妻の組み合わせが魅力的だ。

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