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「マリー・アントワネットの衣裳部屋」書評 ファッションから迫る数奇な生涯

評者: 諸田玲子 / 朝⽇新聞掲載:2019年12月14日
マリー・アントワネットの衣裳部屋 著者:内村理奈 出版社:平凡社 ジャンル:ファッション

ISBN: 9784582620696
発売⽇: 2019/10/17
サイズ: 20cm/308p

マリー・アントワネットの衣裳部屋 [著]内村理奈

 時代の検証はもちろん、だれかの人となりを知りたければ、その人の衣裳部屋を覗けばよい。とりわけそれが女性なら、心の底まで透けて見えるかも。
 遺品の衣裳、肖像画、当時の手紙や記事……著者は労を惜しまず熱意をこめてマリー・アントワネットの衣裳部屋を再現、私たちに彼女の趣味や暮らしぶり、その時々の胸の思いまでもうかがわせてくれる。
 高さ90センチほどの髪形を母に手紙で叱責されて懸命になだめようとするところはいかにも甘やかされたお姫さまだし、顰蹙を買いながらもシンプルな白いモスリンのドレスで肖像画を描かせる彼女は自然回帰を願う素朴でやさしい女の顔を、処刑の際の簡素な白いガウンは「決然と覚悟を決めて臨む神々しいばかりの姿」を浮かび上がらせる。恋人のフェルセンへ遺した指輪の刻銘にもほろり。衣裳や小物から数奇な生涯に迫る手腕に感服した。美しい写真や絵も満載され、わかりやすい解説もうれしい。