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「世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0」 無理をしない、すがすがしい合理化

 近年、注目を集めているプロゲーマーの世界。「小さいころからずっと格闘ゲームへの情熱だけで生きて」きたという著者は、「ストリートファイターⅤ」の世界大会で快進撃を続ける第一人者だ。「中足払いキャンセル波動拳」という耳慣れないワザが基本という斯界(しかい)に、私はまったく疎いが、反射神経を極限まで磨き上げる必要があることは、容易に推測できる。

 変化が激しいゲーム界で著者が戦い抜くために使うワザは「努力」。といっても、「勝ちにこだわる」「一人でやる」という従来型ではなく、「『負け』の中に答えがある」「ライバルは『敵ではない』」という進化型の実践が「努力2・0」の所以(ゆえん)だ。

 極意は「無理をしない」ことに要約されるが、従来型にも増してストイックでもある。ゲームへの集中を貫くために、部屋に置くのはベッドだけ。その部屋も外出時のタイムロスを減らすために駅近1階を探す。という具合に、すがすがしいまでに思考と行動が合理化されている。

 根性論に根ざした旧来の努力志向は、ビジネスのイノベーションを阻害してきた。新世代市場の先端を走る著者の説く合理的なそれが、意識改革の助けになるといい。=朝日新聞2020年1月18日掲載