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行跡から浮かび上がる等身大の大御所 藤井讓治『徳川家康 人物叢書300』

著・藤井讓治

 小説や映像に登場する歴史上の人物をランキングしたら、徳川家康はかなり上位にくるでしょう。でも、私達が知っているのは脚色された家康像かもしれません。

 本書は家康が75年の生涯の間に、どこで何をしたか、古文書や古記録の一次資料にあたって調べた力作です。史料の数は、家康が発給した文書だけでも4200通に上るそうです。関ヶ原の戦いなど歴史上の一大事の動向のみならず、鷹狩をしたり能を舞ったりした、ほぼ毎日の行動が網羅されています。

 巻末には居所と移動を一覧にした表が掲載されていて、どれだけ旺盛に動き回っていたかがわかります。小説のような内面描写がないことで、かえって並外れた調整能力や行動力を持つ実像が伝わります。

定価2400円+税 吉川弘文館 03・3813・9151