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上出遼平さん「ハイパーハードボイルドグルメリポート」インタビュー 五感を刺激する食の旅へ

上出遼平さん=沼田学氏撮影

 深夜に不定期で放送される異色のグルメ番組がある。「ハイパーハードボイルドグルメリポート」。ロシアのカルト教団、台湾のマフィア、ケニアのゴミ山で暮らす人々に会いに行き、食について密着する。そんな番組の企画、ロケ、演出、編集など全てを担っているのが著者だ。

 単に番組内容を紹介する本ではない。放送にはない取材者としての葛藤や空気感が存分に描かれる本格的ノンフィクションだ。約3年かけて執筆した。「五感を刺激する能動的な旅に読者をいざないたかった」

 印象的だったのは、西アフリカのリベリアで出会ったラフテーという著者と同じ年の娼婦(しょうふ)だという。内戦で11歳の時に両親を殺された。その後、兵士になり、報復するために人を殺したことがある。彼女に食事を見せてほしいと頼むと、男と寝て200円を稼ぎ、150円の飯を食べる。「一緒に食べない?」と勧められ、分けてもらった。打ち解けた雰囲気の中、「今幸せ?」と尋ねた。

 食事を分けてもらうことや幸せと聞くことには批判もあるという。だが、著者には信念がある。「人と何かを分け合うことは、人間に許された幸せの形だと思う。断ることでどれだけ心を傷つけることか」。幸せかどうか尋ねることは、経済的な豊かさだけが幸せの尺度なのかという問題提起だという。

 大学生の時に、ハンセン病患者が暮らす中国湖南省の村に行った。本来は隔離する必要のない人たちが、見た目だけで遠ざけられていた。「知らないことは人を苦しめる。どうしたら多くの人に知ってもらえるのか」。そんな出来事が、バラエティーとジャーナリズムの融合を考えるきっかけの一つになった。

 罪人でも遠く離れた国の人でも彼らの食を見ると、私たちと地続きにいることを教えてくれる。(文・宮田裕介 写真・沼田学)=朝日新聞2020年5月9日掲載