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「フジモトマサルの仕事」 ほんのりぴりっとフジモトの絵

 漫画家でイラストレーターのフジモトマサル(1968~2015年)。没後5年でまとめられた『フジモトマサルの仕事』(コロナ・ブックス編集部編)に、彼の作品世界が詰まる。音楽や映画を愛した人柄とともにたどられる。

 二足歩行の擬人化された動物を描いたフジモトの物語は、可愛らしいけれど、どこか奇妙で皮肉めいている。記憶を失った女性が鳥たちと過ごす『二週間の休暇』。夢か現実か分からない世界をさまよい続ける『夢みごこち』。

 その世界観を北村薫は「入り込み、帰って来られなくなる可能性すらある」と表現する。装画や挿絵を手がけたフジモトと仕事をともにした作家たちの寄稿は、どれも目を引く。「ほんのりとした、しかしぴりっとエスプリのきいたユーモアの精神」がある絵と村上春樹は評している。

 たとえば表紙の一枚を見れば伝わるだろうか。エレベーターに黒い動物が2匹、こちらを待っている。宮沢賢治の「注文の多い料理店」を思い出す。ついて行ってみたいが、ちょっと怖い。(森本未紀)=朝日新聞2020年6月20日掲載