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「ニューヨーク・タイムズが報じた 100人の死亡記事」書評 訃報は「時間を超越する経験」

評者: 生井英考 / 朝⽇新聞掲載:2020年07月18日
ニューヨーク・タイムズが報じた100人の死亡記事 著者:ウィリアム・マクドナルド 出版社:河出書房新社 ジャンル:伝記

ISBN: 9784309207971
発売⽇: 2020/05/22
サイズ: 22cm/461p

死は、人生を呼び起こし、過去に光を当てる。リンカーン、ヒトラー、スティーブ・ジョブズ、マイケル・ジャクソンなど、近現代史を体現する100人の死亡記事をとりあげ、その生き様…

ニューヨーク・タイムズが報じた 100人の死亡記事 [編]ウィリアム・マクドナルド

 新聞で訃報(ふほう)を読むのは楽しい。というと不謹慎だが、短い字数で故人の業績から生い立ち、人柄までのエッセンスをまとめる技は新聞記者ならでは。抑えた言い回しを心がけながら、腕によりをかけた成果が訃報記事なるものだろう。
 米ニューヨーク・タイムズ(NYT)の紙面から訃報を選りすぐった本書は、そんな思いを新たにさせる。
 古くは鉄血宰相ビスマルクやヴィクトリア女王、新しくはスティーヴ・ジョブズ、プリンス、モハメド・アリ。歴史書を読むようで実は死去の直後に掲載されたところが違う。リンカーン、ケネディ、マルコムX。暗殺の衝撃と哀悼が事件報道とは異なって表される。
 NYTで訃報欄を担当する編者は過去の死亡記事を読むのは「時間を超越する経験」という。数少ない日本人のひとり、昭和天皇の項に「日本人は、一つの時代が終わった喪に服している」とある。ああそういえばと、茫洋(ぼうよう)たる思いに駆られるのである。