「空中写真歴史図鑑」 気球からドローンまで、空から見た文明の絶景

気球から飛行機、そしてドローンへ。カメラは黎明(れいめい)期から空を飛び、眼下を撮ってきた。そんな空中写真の数々が収まっている。
ナダールが気球からパリをとらえたのが1858年。凱旋門や街路が写るが、かなりぼけている。しかし象徴的に思えるのは、2018年までの約200枚に同様の都市景観が多いためだ。編集方針もあるだろうが、人類は空撮の最初から文明が大地に刻んだ跡を、いわば自画像として眺めたかったのではないか。
美しい街並みや摩天楼の半面、戦争や災害によって傷ついた都市も。その姿を確認することが、次なる一歩につながるのだろう。
近年は機材が高度化し、人工衛星やドローンからの撮影が多いためか、地表をスキャンするような高精細で分析的な写真が目立つ。ニューヨークの自由の女神像の台座の幾何学美など、思わぬ発見もある。一方でふと思う。人類はどこまで地球を改変し、どこまで見る欲望を拡大させるのか、と。=朝日新聞2020年9月5日掲載